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宮崎名物チキン南蛮をおさえたら…鬼の洗濯板を眺めながら楽しむ青島の氷菓を

宮崎名物チキン南蛮をおさえたら…鬼の洗濯板を眺めながら楽しむ青島の氷菓を

ENTERTAINMENT 宮崎県

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数千もの伝承の中から、都道府県ごとに一匹の妖怪を選び、造形作家森井ユカの独自の解釈で創造しました。妖怪に誘われるがまま旅すると、美味しいもの、きれいな景色に必ず出会える!?ようこそ、空飛ぶ百鬼夜行へ。

宮崎県 ガモジン

宮崎市内、西都市内などに伝わる鬼の様相をした妖怪。子どもが言うことを聞かないときに「ガモジンがくるぞ」と怖がらせ驚かすための存在であり、明確な姿は描かれていない。

ご利益 家内安全

歴史が作る豪快な風景 鬼を巡る宮崎の旅

「悪いことをすると〇〇がくるぞ」と言われた経験は誰にでもあるのではないだろうか。ガモジンはそんなときに都合よく引き合いに出される、宮崎市内、西都(さいと)市内を伝承地とする鬼だ。誰もその姿を見たことがないため筆者の想像で造形してみたが、「家にガモジンの木彫りのお面があって怖かった」という県立図書館の司書さんによれば、ちょっと迫力不足のようではある。 

ところで宮崎県には鬼に因んだ名所がいくつか見られる。県外にもその名が轟(とどろ)く天下の名勝といえば「鬼の洗濯板」だろう。宮崎空港から車で15分ほど、正式名称は「青島の隆起海床(りゅうきかいしょう)と奇形波蝕痕(きけいはしょくこん)」で、約700万年前の砂岩と泥岩の層が傾いたもの。約8kmにわたる眺めは壮観この上ない。 

鬼の洗濯板

宮崎県宮崎市青島 

洗濯板の散策後にクールダウンするなら、2019年開店の「宮崎氷果店青島店」でかき氷を。ご家族を看病した経験から、誰もが安心して食べられるものを目指したオーナーの三宅亜矢さんは、地元食材を使い、全て手作りの無添加にこだわった。胸が高鳴るような、愛らしくも迫力のある佇(たたず)まい、食べ進めると違った食感が楽しめる構成など、エンターテインメント性もたっぷりだ。 

気分爽快になったら宮崎名物チキン南蛮を求めて市内の中心地へ。1960年代に宮崎中に広まったとされる、今や全国区のご当地料理。目指すは地元の人たちが詰めかける「おぐら瀬頭店」。揚げたチキンは柔らかく、タレは甘じょっぱく味わい深い。豪快にのせられた濃厚なタルタルが食欲を喚起して、鬼の洗濯板で消耗した体力がみるみる蘇(よみがえ)る。

宮崎氷果店 青島店には遠いところから目指してやってくる人も多い。右から「青島季節のフルーツ金時」「宮崎完熟マンゴー」「みやざき特選抹茶 」

宮崎氷果店 青島店

宮崎県宮崎市青島2-8-1 

0985-82-6367

https://chillchillkitchen.com/

宮崎に来た実感が湧く、おぐら瀬頭店のチキン南蛮。

おぐら 瀬頭店

宮崎県宮崎市瀬頭2-2-23 

0985-23-5301

https://www.ogurachain.com/

鬼が先導してくれる彩り豊かな宮崎の食

満腹になったところで宮崎市内から北へ車で40分ほど、国内有数の古墳群、西都原(さいとばる)古墳群へ。古くは3世紀後半、新しいものでも7世紀という、気が遠くなるほどの歴史が目の前に広がる。その中で唯一の横穴式石室を持つものが、通称「鬼の窟(いわや)古墳」と呼ばれている円墳だ。とある娘を見初(みそ)めた鬼が求婚のためにこの窟を作ったものの、娘の父であるオオヤマツミノカミが完成を妨害し、それが叶うことはなかった……というちょっと悲しい伝承を持つ。 

西都原古墳群の中にある「鬼の窟古墳」。腰を屈めながら石室の中に入れるのは貴重な体験

西都原古墳群

宮崎県西都市三宅

さらに約1時間のドライブで、都城市(みやこのじょうし)の東霧島神社(つまきりしまじんじゃ)へ。ここにも鬼に関する逸話がある。あるとき神が、悪行を繰り返す鬼たち(豪族)に「麓(ふもと)から神殿まで、一夜にして1千個の石を積み上げれば願いを叶える、できなければ去れ」と申し伝えた。あと1個で成し遂げてしまうというそのときに、やや、このままでは困ると思った神が空を明るくし、鬼たちは仕方なく退散したという。ここを「鬼磐階段(おにいわかいだん)」といい、振り向かずに願いを唱えてっぺんまで登ればそれが成就するといわれている。 

不揃いで手強い、登り口で鬼が番をする東霧島神社の「鬼磐階段」

東霧島神社

宮崎県都城市高崎町東霧島1560

宮崎市内に戻り、最後に訪れたのは、2022年に開店した、今注目すべき宮崎フレンチ「saintM(さんてむ)」。天井が高くシックなデザインの落ち着ける店内に、活き活きと風味の良い地元の素材が、彩りよく繊細に盛り付けられている。ヘッドシェフの川崎誠さんは大阪・東京・パリを経て出身地であるここ宮崎に開店。地元生産者と共に宮崎ならではのフレンチを開拓する。ワインのほか、宮崎らしく焼酎とジンも用意されているので、スターターに飲む人もいるそうだ。 

宮崎の甘長シシトウの上にキハダマグロ、スナップエンドウとそら豆をのせて
伝統野菜・佐土原ナスとアオリイカ

宮崎のモッツァレラチーズ、カプレーゼ仕立て(saint M)

ヘッドシェフ川崎さん

saint M(サンテム)

宮崎県宮崎市橘通東3-7-6 中馬ビル 2F 

https://www.saintm-miyazaki.com/

Instagram @saint_m_miyazaki

古代から現代を一気に駆け抜ける、鬼と旅する宮崎旅行。日本にはまだまだ多様な顔がある。

参考
「県内の妖怪について」小山博(宮崎県総合博物館研究紀要)
『日向神話』青島神社・日向神話館
『西都原古墳群探訪ガイド』宮崎県立西都原考古博物館
西都市観光協会 www.saito-kanko.jp/tourisms/ 鬼の窟
東霧島神社公式リーフレット
『うちの郷土料理』 www.maff.go.jp/j/keikaku/syokubunka/k_ryouri/index.html

取材・文・造形 森井ユカ

立体造形家/キャラクターデザイナー ポケモンカードゲームのイラストレーション、「コネコカップ」「ネゴ」のデザイン、粘土遊びセット『ねんDo!』のディレクションなど。著書多数。

撮影 原ヒデトシ 
編集 中野桜子

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