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歴史の名場面、臨場感たっぷりに再現した小堀鞆音~日本画聖地巡礼8香川

歴史の名場面、臨場感たっぷりに再現した小堀鞆音~日本画聖地巡礼8香川

CULTURE MUSEUM

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日本画専門美術館として半世紀以上の歴史を誇る『山種美術館』。本連載は同館の山﨑妙子館長をナビゲーターに、傑作が生まれた〝聖地〟を巡る。名画の世界を追体験し、その地に立った画家たちの視点を再発見していく。(全12回)

『那須宗隆射扇図』小堀鞆音×香川・屋島

小堀鞆音『那須宗隆射扇図』(なすむねたかしゃせんず)1890(明治23)年 絹本・彩色・軸(1幅)  121.8×56.1cm 山種美術館

ご覧いただいている作品は「源平合戦」のなかの一戦、「屋島の戦い」の有名な場面を取り上げています。作者である小堀鞆音(こぼりともと)は、歴史を題材とした作品、特に本作品のような武士を描く武者絵を多く手がけた日本画家です。
テーマとなっている話の舞台は、香川県高松市屋島。源氏と平氏は火花を散らすも勝負がつかず、夕刻頃には休戦状態になりました。しかしこの時、平氏方から女性を乗せた一艘(そう)の船が源氏方に向かってきます。船上の女性は「これを射よ」とばかりに船首に扇を立て、手招き。それに対し、源氏方で弓の名手であった那須与一(なすのよいち)(宗隆)が射手(いて)となり、見事に扇を射落としたのです。このエピソードは『平家物語』や『源平盛衰記』でもよく知られています。
本作品では、画面手前に波立つ海の中で馬にまたがる与一、その視線の先には扇と女性が描かれています。与一を顔の見えない後ろ姿で表す構図は、与一の視点を観る側に重ねさせ、扇に矢が当たるかどうかという臨場感、緊張感が伝わってくるようです。

屋根の形をした屋島(写真:crossroad/PIXTA)

現在も、「屋島の戦い」を肌で感じられる場所が残っています。特に与一が扇に矢が当たることを祈ったと言われる「祈り岩」や、弓を引く時に馬を止めたとされる「駒立岩(こまだていわ)」は、与一の存在を実感できるスポット。本作品の画題にもなった歴史の跡を巡る旅に出かけてみませんか?
(山種美術館 学芸部)

こぼり・ともと

1864年、下野国(現・栃木県)に生まれる。旧姓・須藤、本名・桂三郎(けいざぶろう)。川﨑千虎(ちとら)に師事。日本美術協会展などで受賞を重ねる一方、日本青年絵画協会に参加。1898年、日本美術院創設に参加。文展開設以降は官展で活躍。1908年、東京美術学校教授。1917年、帝室技芸員。1919年、帝国美術院会員。厳密な時代考証に基づく歴史画を追求した。1931年没、享年67。

屋島

香川県高松市屋島
アクセス:琴電屋島駅からはクルマで約10分
高松市北東部に位置。1934年、瀬戸内海国立公園、並びに国の史跡、及び天然記念物に指定された。テーブル状の高地で、大きな屋根のように見えることから「屋島」と呼ばれる。ハイキング、野鳥・植物の観察が楽しめるほか、屋嶋城跡や屋島寺、展望台や水族館も。周辺には、源平合戦の史跡が多く点在する。山上からは瀬戸内海、高松市街地、讃岐山脈などが一望できて、夕景・夜景は、「日本の夕陽百選」や「夜景100選」、「日本百名月」にも選ばれている。
https://www.yashima-navi.jp/jp/

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やまざき・たえこ

慶應義塾大学経済学部卒業。東京藝術大学大学院後期博士課程修了。学術博士。在学中は日本美術史を学ぶとともに日本画家・平山郁夫氏に日本画の手ほどきを受ける。2007年5月、山種美術財団理事長兼山種美術館館長に就任。著書『速水御舟の芸術』(日本経済新聞社)ほか。各所での講演会などを通し、日本画の普及を幅広く行っている。

【特別展】日本画聖地巡礼―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―

「山種美術館では、名だたる画家たちが制作のために自ら訪れ、描いた実在の場所を日本画の『聖地』と位置づけ、その地がどんな場所なのかを写真や地図などでご紹介し、作品とともにご鑑賞いただく展覧会を開催いたします。現地での写生や画家自身の言葉も合わせて展示し、画家の『聖地』への眼差しを追体験していただくのみならず、なぜ実際の風景とは異なる構図や色調にしたのかなど、作品に込めた想いを再発見していただきたいと思います」(山種美術館 館長・山﨑妙子)

会場:山種美術館 東京都渋谷区広尾3-12-36

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)(9時~20時)

会期:2023年9月30日(土)~11月26日(日)

休館日:月曜日※10/9(月)は開館、10/10(火)は休館

開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)

入館料:一般1400円、大学生・高校生1100円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です)

https://www.yamatane-museum.jp/index.html

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案内人:山﨑妙子(山種美術館 館長)