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土牛が大作に込めた、荘厳なる滝への畏敬の念〜日本画聖地巡礼6 和歌山

土牛が大作に込めた、荘厳なる滝への畏敬の念〜日本画聖地巡礼6 和歌山

CULTURE MUSEUM

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日本画専門美術館として半世紀以上の歴史を誇る『山種美術館』。本連載は同館の山﨑妙子館長をナビゲーターに、傑作が生まれた〝聖地〟を巡る。名画の世界を追体験し、その地に立った画家たちの視点を再発見していく。(全12回)

『那智』奥村土牛×和歌山・那智の滝

奥村土牛『那智』(なち)1958(昭和33) 紙本・彩色・額(1面) 273.4×153.2㎝  山種美術館

華厳の滝(栃木県)、袋田の滝(茨城県)とともに日本三名瀑の一つとして名高い「那智の滝」。熊野那智大社の別宮である飛瀧神社(ひろうじんじゃ)に、滝そのものがご神体として祀られています。

熊野那智大社の社伝によると、滝を祀ったのは神日本磐余彦命(かむやまといわれひこのみこと)、のちの神武天皇です。紀元前662年、丹敷浦(にしきうら)=現在の那智の浜に上陸した神日本磐余彦命一行は、光り輝く山を見つけ、山に向かって進んだ末、那智の滝を発見。大己貴神(おおなむちのかみ)=大国主神(おおくにぬしのかみ)のご神体として滝を祀ったと伝わっています。

古来信仰されてきた那智の滝を描いた本作品。手がけたのは日本画家・奥村土牛です。土牛は1958(昭和33)年に那智の滝を訪れていますが「当時は行くのが大変であった。京都から急行で7時間かかった」という言葉を残しています。現在は高速バス、新幹線・電車、飛行機と多くの交通手段がありますが、当時は大変な旅であったのでしょう。

那智の滝(写真提供:公益社団法人 和歌山県観光連盟)

土牛は滞在中、毎日、那智の滝に通ったといいます。落差は133mあり一段の滝としては日本一。土牛は「崇高なかんじのする滝である」と語っています。高さ2.7m以上の大画面に一気に水が流れ落ちる様子を捉えた本作品。その前に立つと、画家の言葉のとおり、迫力とともに滝の荘厳さが伝わってくるようです。

(山種美術館学芸部)

おくむら・とぎゅう

1889年、東京生まれ。梶田半古に学ぶ。1927年、院展に初入選、1932年に同人となる。1947年、帝国芸術院会員。1962年、文化勲章を受章。1978年、日本美術院理事長。薄い絵具を何重にも塗り重ね、淡い色調によるおおらかで温かみのある作風を確立した。1990年没。享年101。

那智の滝

和歌山県東牟婁郡那智勝浦町那智山

参拝可能時間:7時~16時30分(お滝拝所の入所可能時間は16時まで)

落差133m、滝壺の水深10mにも及ぶ大滝。神武天皇によって祀られたと古事記に記され、古来より熊野信仰の中心地のひとつとして参拝者を集めてきた。那智原始林に点在する「那智四十八滝」の一の滝として、約1300年前から滝行が行われてきた修業の現場でもある。

https://nachikan.jp/spot/

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【特別展】日本画聖地巡礼―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―

「山種美術館では、名だたる画家たちが制作のために自ら訪れ、描いた実在の場所を日本画の『聖地』と位置づけ、その地がどんな場所なのかを写真や地図などでご紹介し、作品とともにご鑑賞いただく展覧会を開催いたします。現地での写生や画家自身の言葉も合わせて展示し、画家の『聖地』への眼差しを追体験していただくのみならず、なぜ実際の風景とは異なる構図や色調にしたのかなど、作品に込めた想いを再発見していただきたいと思います」(山種美術館 館長・山﨑妙子)

会場:山種美術館 東京都渋谷区広尾3-12-36

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)(9時~20時)

会期:2023年9月30日(土)~11月26日(日)

休館日:月曜日※10/9(月)は開館、10/10(火)は休館

開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)

入館料:一般1400円、大学生・高校生1100円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です)

https://www.yamatane-museum.jp/index.html

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案内人:山﨑妙子(山種美術館 館長)