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追体験する傑作誕生の地で発見する御舟の心~日本画聖地巡礼1 京都

追体験する傑作誕生の地で発見する御舟の心~日本画聖地巡礼1 京都

CULTURE MUSEUM

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案内人:山﨑妙子(山種美術館 館長)

日本画専門美術館として半世紀以上の歴史を誇る『山種美術館』。本連載は同館の山﨑妙子館長をナビゲーターに、傑作が生まれた〝聖地〟を巡る。名画の世界を追体験し、その地に立った画家たちの視点を再発見していく。(全12回)

『名樹散椿』速水御舟×京都・椿寺地蔵院

速水御舟『名樹散椿』(めいじゅちりつばき)【重要文化財】1929(昭和4)年 紙本金地・彩色・屛風(2曲1双) 各167.9×169.6cm 山種美術館

2曲1双の金地屛風に椿の名木を描いた速水御舟『名樹散椿』は、昭和の作品として初めて重要文化財に指定されました。

当初、御舟は椿寺の椿と愛宕の時雨桜を描く予定でしたが、椿の花の濃厚な色感と、桜の花の淡白な趣を組み合わせることに躊躇して、椿のみを描くことにしました。そして、京都に向かった御舟は数日間かけて椿を写生したのです。

御舟が描いた五色八重散椿は、加藤清正が朝鮮から持ち帰り、豊臣秀吉により寺に寄進されたという逸話の残る名木です。花の首から落ちる椿を、武士たちは忌み嫌ったとされますが、この椿は、花弁がひとひらずつ散るため珍重されました。

五色八重散椿初代(写真:速水御舟アトリエ伝来)

私が地蔵院を初訪問した際、御舟の描いた樹齢約400年の椿は残念ながら枯れてしまい、そのDNAを受け継いだ二世の木がお寺の玄関脇に植えられていました。あれから、30年余。今春、再訪した私が目にしたのは、先代を彷彿とさせる大樹に成長した美しい姿でした。

五色八重散椿第二世(写真:京都・椿寺地蔵院)

散り落ち、絨毯のように敷き詰められた花びらを眺めながら、御舟が制作にあたり、花や花びらの数を減らして大きくし、デザイン的に仕上げたことがわかりました。また、椿の枝が横へ伸びる不思議なフォルムは、江戸時代の琳派の構図を意識したものですが、それと同時に御舟が椿を凝視し、花や幹の質感を描写していることが見てとれました。そのような再発見があるのもまた〝聖地巡礼〟の醍醐味と感じた旅でした。

はやみ・ぎょしゅう

1894年、東京府生まれ。10代の頃から頭角を現し、1914年以降は日本美術院を中心に新しい日本画の創造に取り組む。1930年、ローマ日本美術展覧会に『名樹散椿』を出品。その際に渡欧し、約7カ月間にわたりヨーロッパ各地を巡り見聞を広める。生涯を通じて次々と作風を変えながら、画壇に新風を吹き込んだ。その画業は同時代や後世の画家に大きな影響を与えている。1935年に急逝。享年40。

椿寺地蔵院

京都府京都市北区大将軍川端町2

拝観時間:9時~16時

アクセス:京福電鉄北野線・北野白梅町駅より徒歩約5分

奈良時代、僧・行基によって摂津の国に建立され幾度かの遷座を経たのち、豊臣秀吉によって現在の地に。

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【特別展】日本画聖地巡礼―東山魁夷の京都、奥村土牛の鳴門―

「山種美術館では、名だたる画家たちが制作のために自ら訪れ、描いた実在の場所を日本画の『聖地』と位置づけ、その地がどんな場所なのかを写真や地図などでご紹介し、作品とともにご鑑賞いただく展覧会を開催いたします。現地での写生や画家自身の言葉も合わせて展示し、画家の『聖地』への眼差しを追体験していただくのみならず、なぜ実際の風景とは異なる構図や色調にしたのかなど、作品に込めた想いを再発見していただきたいと思います」(山種美術館 館長・山﨑妙子)

会場:山種美術館 東京都渋谷区広尾3-12-36

TEL:050-5541-8600(ハローダイヤル)(9時~20時)

会期:2023年9月30日(土)~11月26日(日)

休館日:月曜日※10/9(月)は開館、10/10(火)は休館

開館時間:10時~17時(入館は16時30分まで)

入館料:一般1400円、大学生・高校生1100円、中学生以下無料(付添者の同伴が必要です)

https://www.yamatane-museum.jp/index.html

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