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NYハーレムより先に築かれたブラックカルチャー 歴史の足跡をたどる街歩き

NYハーレムより先に築かれたブラックカルチャー 歴史の足跡をたどる街歩き

TRAVEL 2025.06 ワシントンD.C.特集

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ワシントンD.C.は街歩きも興味深い。散策だけなら無料だが、こんなツアーへの参加もおすすめだ。歴史家でジャーナリストであるブリアナ・A・トーマス。彼女は今、Uストリートの歴史と面白さを伝えたいと、ウォーキングツアーを実施している。きっかけは、この街で生まれ育ったエチオピア出身の祖母の記憶と貴重な写真を残した本を出版したこと。そこには奴隷解放宣言から、人種平等と女性参政権を唱えたアフリカ系アメリカ人の足跡、音楽界の巨人デューク・エリントンらが築いたブラックブロードウェイ時代のことなどが綴られている。

「ここにはミュージアムだけでなく、ニューヨークのハーレムよりも先に築かれたブラックカルチャーがある。今も私たちがここに集まり、街を愛し、楽しんでいる様子を知ってほしいわ」と笑顔で語った。

ブリアナ・A・トーマスのツアー

2021年『BLACK BROADWAY IN WASHINGTON,D.C.』を出版。Uストリートの約90分のウォーキングツアーはウェブからの予約でひとり45ドル。アフリカ系アメリカ人の歴史や文化の史跡などを巡る。全米はもちろん、海外からの参加者も多いという。

https://blackbroadwaytravel.com

1910年創業のハワード劇場はコミュニティの中心として君臨。大規模な改修後2012年再オープン。

名物はチリハーフスモーク。秘伝のチリソースとジューシーなソーセージのホットドッグ。外観の壁画にも描かれるバラク・オバマ元大統領も就任式前に店を訪ね、名物を楽しんだ。

Ben’s Chili Bowl

Uストリートのヘリテージを訪ねる散策は自由気ままに

パステルカラーの街並みもこの地の象徴

 映画のセットのような家が並び、巨大でポップな壁画が躍るUストリート。ここは19世紀末から20世紀前半、人種隔離政策の横行にもかかわらず、アフリカ系アメリカ人による経済的、社会的、文化的に自立したコミュニティが培われた地だ。その集大成がブラックブロードウェイ。ハワード劇場やリンカーン劇場、ナイトクラブ「ボヘミアン・キャバーンズ」などを拠点に多くのミュージシャンが活躍。その筆頭がこの街で生まれ育ったジャズ界の大御所、デューク・エリントン。さらにビリー・ホリデイ、ナット・キング・コールらそうそうたるメンバーがキャリアを築いた。 

 しかしブラックブロードウェイの栄華は1968年に一変する。人種差別や人種隔離政策の撤廃を求めたキング牧師が暗殺されると、貧困問題で苦しむ人々のデモ(貧者の行進)が暴動に発展。その震源地となったUストリートは建物が壊され、住民も流出したという。そんな歴史の生き証人ともいえる店が「ベンズ・チリ・ボウル」だ。1958年、ベンとバージニアのアリ夫妻が創業し、瞬く間に地元の人気レストランに。20万人以上が参加した1963年のワシントン大行進では参加者に食事を提供。暴動の際も店を開け、夜間外出禁止令後も営業の特別許可を得て、復興に努める人々を支援した。今もUストリートの心と胃袋の拠り所だ。

Uストリートの足跡を示す掲示が随所に。

 この街の住民は口々に言う。「この街が最も盛り上がるのは週末の夜。クラブは最高のミュージックに溢れ、人々は踊り、笑顔がはじけ、誰もがブラザー&シスターよ」。Uストリートでブラックカルチャーの原点に出会いたい。

通り沿いの銀行の窓口。かつてはアフリカ系アメリカ人専用の銀行だった。

当時の制服で歴史を語る「アフリカ系アメリカ人南北戦争博物館」ガイドのMasquett Miltonさん。

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