ベトナム・ハノイで感動体験 国立サーカス劇場の伝統芸と舞台裏へ
ベトナムはいま、サーカスを自国の文化として大切にし、発信している。それは世界でも“サーカス芸術立国”といわれるほど。若者たちの躍動感あふれる身体表現、現代的な演出、そして、民族音楽がみごとに融合し、独自の世界を繰り広げる。なかでも、竹を幾何学的に美しく組み合わせて使う「バンブーサーカス」の舞台が有名だ。
一度見たら虜になる、そんなベトナムサーカスの舞台裏を覗いてみよう―。
歴史が育てる国立セントラルサーカス劇場

初めてサーカスを観に行った日のことを覚えているだろうか。うきうきとした気持ちで足を踏み入れてみると、そこはきらきらとした摩訶不思議な別世界。一瞬で魔法にかかってしまう。
ハノイには、1956年からベトナムサーカス連盟が運営する国立セントラルサーカス劇場がある。週末になると、カップルや家族連れが大勢やってくる。
「子どもたちに、この楽しさをどうしても味わわせたくて」と語る若い夫婦。子どもたちは風船を手に、大はしゃぎだ。
中盤のクライマックス。女性が全速力で疾走する馬の背で逆さまになったり立ち上がったり。危険極まりない曲馬に、大歓声が沸き起こる。サーカスの円形舞台は、18世紀後半、馬が走り続けるために半径6.4mで設計された。この伝統は、世界で脈々と継承されている。
伝統に裏打ちされた究極の技を優美に魅せる
来年、創設70周年を迎えるセントラルサーカス劇場のオープニングは、10m以上ほどもある高さで舞う4人の空中技「エアリアルティシュー」で始まった。下では、ベトナムのすげ笠「ノンラー」とアオザイを着た女性たちが優雅に踊る。

動物芸もまた多彩だ。象や虎などの野生動物はいないが、さすがベトナム、水牛も登場する。バックヤードに大きな専用の動物棟があり、トレーナーが世話をしていた。
高難度の空中技を披露するブイ・ティ・トワンさんとヴ・タン・チュアンさん夫婦は、日本のサーカス団にも出演していた。
「夫婦げんかですか? もちろんしますよ。けんかしたまま笑顔で演技をして、演技が終わってけんかの続きをしたりね(笑)。でも、サーカスをやめたいと思ったことは一度もないんです」

夫婦で、空中で器具を口でくわえて行う伝統芸「ドゥ・クワン・ホ」。「顎が少し痛いけど、美しい演目だからふたりで選んで修得しました」

綱の上を一輪車で渡るグエン・ホワン・イェン・ニュンさん。「祖母がここの大スターだったので、5歳でこの道に入ると決めました」


ベトナムサーカス連盟理事長で団長のトン・トゥアン・タンさんは、もともと有名な大蛇使いで、人民芸術家という称号も持つ。
セントラルサーカス劇場
ハノイ駅からほど近い中心部にあり、週末や祝日などに上演。伝統的な演目に新しさを加えた演出は、国内外のサーカスコンテストでも受賞するなど高い評価を受ける。
ベトナムへの翼
羽田空港(HND)または成田国際空港(NRT)からホーチミンシティ(SGN)までANA直行便で。または成田国際空港(NRT)からハノイ(HAN)までANA直行便をご利用ください。
取材・文 西元まり
撮影 西元譲二
コーディネート 勝恵美
編集 中野桜子
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