おいしくヘルシー、しかもキュート。食を多彩にするプラントベースという選択肢〜ニューヨーク、ヴィヴィッドに街を彩る最旬ドーナツ-5
ハンバーガーにピザ、ベーグル……アメリカが発信源の著名な料理は数あれど、実は甘味なくして語れないのがこの国の食文化。中でもドーナツは、老若男女にこよなく愛されつづける定番メニューだ。甘くておいしいスイーツなれど、昨今は食生活の多様化に伴い、さまざまな選択肢が。動物性原料をいっさい使わぬ、体と地球に優しいメニューで人気を誇るマンハッタン発のベーカリーをピックアップ。
「エリン マッケンナズ ベーカリー」のメニューは、すべてヴィーガン&グルテンフリーだ。アレルギーに優しいのに文句なくおいしいと、今では国内に複数の店舗を持つ。「ロウアーイーストサイドで開業した当初、この辺りは閑散として、プラントベースのフードに対する偏見だけがあった。でもその状況もずいぶん変化しました」と、創業者のエリンさんは振り返る。
「2005年の時点では、プラントベースやヴィーガンといった食文化がまだ受け入れられておらず、“変なにおいがしておいしくない、ごく一部の人のもの”という先入観が横行していて。私は自分自身が食物アレルギーを持っているので、誰でも安心して気兼ねなく食べられるベーカリーをニューヨークにつくりたかった。それで素人だったところからレシピ研究を重ね、たった4種のメニューを携えて店を立ち上げたんです。初めは、あえてプラントベースであることを売りにはしませんでした。味を気に入ったファンが増えてから“実はこれ、プラントベースなんです”と明かしましたね。そうするとまたたく間に評判が広まっていき、うれしかった」
通常のドーナツと比べても遜色ない絶品のもちもち食感の秘密は豆粉。マイナスな先入観を格別レシピで見事に払拭し、今では牛乳や卵を使わないヴィーガンないしプラントベースは時代の主流にすらなりつつある。「私の店がヴィーガンブームのさきがけだなんて大それたことは考えていません。ただ、店とともに時代は確実に変わったと思います」と謙遜するエリンさん。実際は、グルテンフリーやヴィーガンのレシピ本を何冊も出版している著名人だ。
現在はフロリダのディズニーワールドにまで支店を構え、あらゆる子どもへ喜びを届ける「エリン マッケンナズ ベーカリー」。ポップでキュートなその世界観も、さまざまな場所からオファーが絶えない理由のひとつだろう。「店には私の定めたルールがふたつあるんです。ひとつは体に悪影響を及ぼす可能性のある材料を使わないこと。そしてふたつめは、かわいいユニフォームを着ること!ちょっとレトロな、ドラマの『ツイン・ピークス』みたいなテイストが好き」。そのように語るエリンさんには、かつてスタイリストの卵としてキャリアを積んでいた経験も。店ではオリジナルのウェアも取り扱っており、ファッション好きや業界人たちも多く訪れる、このエリアの名スポットとなっている。
Erin McKenna’s Bakery
248 Broome Street, New York, NY 10002
www.erinmckennasbakery.com
案内人:ヒロ・ヨネモト
写真:ジェイコブ・サドラック+キャロル・クルス
機材提供:CSIレンタル
取材&文:山下美咲