見て、食べて楽しい、クリエイティブな新感覚ペストリー〜ニューヨーク、ヴィヴィッドに街を彩る最旬ドーナツ-2
ハンバーガーにピザ、ベーグル……アメリカが発信源の著名な料理は数あれど、実は甘味なくして語れないのがこの国の食文化。中でもドーナツは、老若男女にこよなく愛されつづける定番メニューだ。店や流行がつねに移り変わる大都市ニューヨークで今頭角を表している屈指の人気店を、マンハッタンとブルックリンからそれぞれご紹介する。
土地への敬意を背景に、心弾む革新的な挑戦を
アートやファッション関係者が多く住むマンハッタンのロウアーイーストサイドでは、近年上質なベーカリーが人々の関心を集めている。その筆頭が「スーパームーン ベイクハウス」。オーストラリア出身のデザイナー兼フォトグラファーであるアーロンさんが仲間と営む注目店だ。
「文化が色濃く残るこのエリアで、新しく刺激的かつ型破りな店を始めたかったんです。ニューヨークのベーグルがこの地で発明されたという歴史にも惹かれて。地産のフルーツやこだわりのバターなど最高ランクの材料だけを使い、トッピングから中身のクリームまですべてここで手づくり。おいしく楽しくユニーク、そして時にノスタルジックでありたい」
味のみならずアーティスティックなプレゼンテーションが秀逸。写真やデザインのスキルを生かしたSNSでの見目麗しい展開にも注目を。アーロンさんは過去に6回の来日経験があるほど日本好き。アジアの食文化からも着想を得ているといい、日本をはじめとする海外への進出が目標のひとつ。
Supermoon Bakehouse
120 Rivington Street, New York, NY 10002
www.supermoonbakehouse.com
世界の味を再解釈した、多幸感あふれるピース
ブルックリンで創造性豊かなペストリーを探すなら、「ファン ファン ドーナツ」は見逃せない。創業者のファニーさんはこれまで多数のメニュー監修のほか、レシピ本の執筆経験もある実力派。ショーケースには色とりどりのドーナツが並ぶが、合成着色料や香料は使わず、できるだけナチュラルな原料を用いている。
「大切なのは、プレイフルであることです。材料には季節の食材と同様に、世界中の調味料を採用。ドーナツを、異文化探求の機会にしたいと考えていて。私の故郷のメキシコの食文化を活かしたコーンクリームのほか、韓国のコチュジャンをジャムに入れたメニューも」。店内にはつねに、驚きの声と笑顔が絶えない。
店舗は窓一面にチャーミングなイラストが描かれ、温かく和やかなムード。美しい色合いや風味を加えるため、キッチンではフルーツを搾る作業もおこなう。ファニーさんは日本の食材も大好きで、レパートリーの中に柚子や抹茶もよく登場するとか。彼女いわく「料理やお菓子づくりのイマジネーションは、文章の編集作業に似ているかもしれません」。秋にはリンゴと味噌をマッチさせたドーナツを予定しているというから、乞うご期待。
Fan-Fan Doughnuts
448 Lafayette Avenue, Brooklyn, NY 11205
www.fan-fandoughnuts.com
案内人:ヒロ・ヨネモト
写真:ジェイコブ・サドラック+キャロル・クルス、スーパームーン ベイクハウス(ペストリー写真)
機材提供:CSIレンタル
デザイン:塚原敬史
取材&文:山下美咲