マレーシアのホテルはなぜ安い? お値打ちラグジュアリーは最幸の目的地
クアラルンプール(KL)のホテルはどうしてこんなに安いのか?
ホテル関係者の誰に聞いても、その明確な答えがわからないと言う。今回取材したマンダリンオリエンタル、リッツカールトン、セントレジスなどの世界で展開するホテルチェーンの総支配人やマネージャーに聞いても、皆一様に首をかしげて「どうしてなんでしょうねぇ」とまるで他人事のように不思議がる。
KLではホテルが安いということは昔から知られていたこと。しかし昔は昔。マレーシアの国力や経済力も今ほど高くなく、物価も安かったためホテルが安いということは頷けた。しかし東南アジアで最も成長を遂げた国の一つとなった今、相変わらず何故、いまだにこんなに安いままなのか。その理由は誰にも答えられないのである。そればかりか「私達だって料金を上げたいんですけどね」という。
それなら値上げをすれば適正価格に料金を改定すればよいのでは、と思う。そこで「最低価格を決めたりはしないんですか」と質問をしてみた。すると「それはできません。お互いがお互いを気にしながらの値段設定になっているので」という。しかしそれは世界のどの場所であっても同じことではないのか。先に述べたマンダリンやリッツ、セントレジスが日本の宿泊料の半分、いや5分の1以下で泊まれるというのは明らかに歪んでいる。あ、いや我々観光客にとっては嬉しすぎるし恵まれすぎている。世界のリッツカールトンやマンダリンオリエンタルに3万円以下で泊まれるという嬉しい異常さは、いったいどういうわけだか。その理由がわからないという。
明確な理由な無いとはいうものの、ある人は「競争が激しいから」という。しかしそれだってKLに限った話ではない。またある人は「他が値上げをしないから」という。それも真っ当な理由なように思える。
しかし逆に「他が値上げしたからうちも値上げする」というふうにならないまま今日まで来ているのが謎。観光客を誘致するために宿泊料を低く抑える代わりに国から補助金がでているという話も聞いたことがない。うーむ、謎が謎を呼ぶばかりだ。しかも今後さらにいくつかの大型ホテルが計画されている。ということはさらに競争が激しくなって、ますますホテルの金額が安くなるということになるのだろうか。
そんなKLのホテル宿泊料事情だが、日本から7時間足らずの距離に世界の一流ホテルが安く泊まれる場所があるということを、もっと多くの日本人が知るべきだ。知って世界の一流ホテルのサービスを味わい、心から寛ぎ、過ごしてみてはどうだろう。
日本や他の国や都市で味わうことのできないKLのホテル体験。常夏の国マレーシアで、財布を気にせず過ごす、なにもしない脱日常のアーバンリゾート体験。KLは今の日本に暮らす我々にとって、何よりも嬉しい旅のデスティネーション=目的地なのかもしれない。
写真・文 尾嶝太文/山下マヌー