ナチュラルマッコリ!韓国グルメの新しいマリアージュ~搾りたてのごま油を求め、ソウルへvol.3
新しいレストラン作りをしているお店があると聞き、望遠洞という街にあるポットッパンを訪ねました。オーナーシェフのカンソングさんがこだわりのマッコリをペアリングしてくれます。「お店は8年前に母と一緒にオープンしました。母は料理担当。マッコリは大量生産される安価なものが主流となっていますが、ナチュラルなマッコリのおいしさも知ってほしい。マッコリの新しい文化を作りたいという想いで選んでいます。メニューは少数ながら、食材にもこだわります。ほぼ全品に使っているごま油は、完全手作りのものを使用。地方で 農業を営む叔父が栽培しているごまを近所の製油所で油にし、送ってもらっています。ごま油は〝韓国料理の品格を表すもの〞だと思いますね」。カンさんの店作りにはオリジナルストーリーが溢れ、温故知新を感じます。
生産者の顔が見えるような味わい深い料理とマッコリ。見たことのないエチケットが味への興味を掻き立てる。まるでワインのように、生産者や産地にこだわったマッコリは飲んだことのないおいしさ。
店主のこだわりと愛情が、若者を惹きつける人気の秘訣。「どんな日も、ここを訪れる日が最高の時間になるようにお客様に寄り添っていきます。ぜひ韓国のすばらしいマッコリと母の料理を体験しに来てください!」
복덕방(ポットッパン)
ソウル特別市 麻浦区 望遠1洞 414-14 予約は韓国ではキャッチテーブルというサイトから。観光で来るかたはインスタグラム(@imkhang9)にDMください(最大3名席)。
全ての料理とマッコリはテイクアウト可能です。
ごま油は韓国宮廷料理にも欠かせないエッセンス。古くから伝わる伝統的な味を再現。
市場の風景と打って変わって、ゆっくり落ち着いて韓国料理を楽しめるところに足を運びました。ソウルでもスタイリッシュな区域とされる三清洞にある、一軒家をリモデリングし宮廷料理をコース に落とし込んでいる「ピョナナンチップ(〝落ち着く家〞という意味)」。宮廷料理といっても、高級食材をふんだんに使うレストランや、現代風に再構築したスタイルもソウルにはたくさんありますが、「ピョナナンチップ」は、本当に 人の家に招かれたような感覚に陥る空間。内装、器、料理の盛り付け方がみな、飾りすぎず、飾らなすぎず、心地がよいのです。料理はどれも韓国料理のクラシックに忠実なもので、流行も行き交う現代において、いろいろなジェネレーションの人が伝統的な食文化を忘れないよう親しめる場所に、必要性を感じました。
ポッサムとは茹でた豚肉をキムチや野菜などと一緒に食べる料理。ピョナナンチップのポッサムは、上品に甘酸っぱい大根にくるんで食べる。
クラシックなチャプチェ。市場、レストラン、家庭などいろいろな場所で食べられる炒め春雨料理。必ずごま油の香りが決め手となる。
편안한집(ピョナナンチップ)
(02)735-0092
ソウル特別市 鍾路区三清洞 27-3
Lunch 11:30~14:00 dinner 17:00~20:30
韓国語で“落ち着く家”という意味がある名の通り、古き良き一軒家を改装した店内。人の家に来て料理を堪能できる感覚に陥る。宮廷料理を今の人に合ったアレンジにした、やさしい料理の数々が食べられる。
食を求めて ソウルの街を歩く 日本の食文化と違う? 韓国における韓国料理
韓国における食事は人とのコミュニケーションの場として使われることがとても多いです。街を 歩いているとたくさんの料理店があり、韓国料理以外もありますが、やはり圧倒的に韓国料理店が多い。いろいろなジャンルの料理を食べる日本の食文化との大きな違いかもしれません。だからこそ、本当にごま油の存在が大きいことがわかります。日本で言う〝だし〞のように、決め手になる料理が実に多いと感じますね。
鍋の仕上げにさっとかけたり、ユッケや肉刺し、タコ刺し(踊り食い「サンナッチ」)などには、ごま油と塩を合わせたタレが主流の味付け。
若者に流行りのホップ通り。 昔から通う年配層の背中を追って
夕暮れ18時頃、一杯のビールを飲むために向かった乙支路のホップ通り。一昔前は近所で働く年配層が仕事終わりに立ち寄るのがホップ通りだと聞きました。今日も日が暮れるにつれ大盛況。それも、どんどん若者が増えていきます。近年、集まる人が増え、店の外にたくさんの野外テーブルと椅子を置いて営業するようになったそうですね。どんどん店の外にテーブルが増えていく光景は夜の市場に匹敵するほど、夜の賑やかさを経験するのに絶好の場所でした。
乙支路3街ノガリ横丁は、乙支路3街駅の3・4番出口の裏路地に位置する。発祥といわれる「ノガリ」とは、スケトウダラの 幼魚の干物のこと。日本でいうアジの干物やエイヒレのようにあぶって食べると、うまみたっぷりで たまらないおいしさ。これとビールが名物で、17時くらいから赤と青の椅子が店の外に出され、歩行者天国状態のビアガーデンになる。
ソウミンジョン
SOLSOL SEOUL 代表取締役。大学で商学部・マーケティングを専攻したのち、Le Cordon Bleuでフランス料理ディプロマと、韓国Sookmyung女子大学で韓国伝統料理課程を修了。その後、日本のテレビ、雑誌、広告でフードコーディネーター・フードスタイリストとして活動。2020年からSOLSOL SEOULを立ち上げ、たちまち即完売の大人気ブランドに。韓国ごま名産地イェチョンの手作りごま油を日本の食卓でも味わってもらえるよう広めている。
韓国イェチョン産手作りごま油
案内人/ソウミンジョン 撮影/尾原深水 編集/中野桜子