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路地こそがイスタンブールの心臓 ツアーでは味わえない地元感への誘い

路地こそがイスタンブールの心臓 ツアーでは味わえない地元感への誘い

TRAVEL 2024.12  イスタンブール特集

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イスタンブールの路地には、昼と夜で表情が変わるエリアも多い。オルタキョイはその代表だろう。ボスポラス海峡のほとりに位置するこのエリアは、夜のナイトライフとストリートフードで賑わい、ローカルにも観光客にも愛されている。オルタとは「真ん中」、キョイは「村」を意味し、その名の通り街の中心に位置するように、人々が集まる場所だ。海を望むモスクと橋が重なり、イスタンブールの象徴的な風景が広がる。そこには、手作り雑貨や様々な食べ物の屋台が並び、すべての路地が海へと繋がっているのが特徴的だ。

一方、カラキョイはイスタンブールの新たな顔を見せるエリアだ。かつては人々が避けるようなエリアだったが港を中心に再開発が進み、今では街の活気ある場所として知られている。路地に入れば、地元の人々が通う手頃な店が並ぶ。「サバサンド」やその発展型として近頃人気の「サバラップ」、ガーリックが効いた「牛の胃袋スープ」、ムール貝にご飯を詰めた「ミディエドルマ」など、路地にはあらゆるストリートフードが揃っている。

イスタンブールの路地は、ただの道ではない。そこにはファストフードやカフェ、アンティークショップなどが並び、まるで街全体が巨大な市場のような役割を果たしているのだ。特に、古くからの習慣が残る場所では「最初のお客には値引きする」という風習があり、一番に来たお客には特別なサービスがあるのも、なんともローカルらしい温かさを感じる。

路地こそがイスタンブールの心臓なのだ。ツアーでは立ち寄ることが難しい場所も多いが、そこで出会う一瞬一瞬がこの街の成り立ちと活気を象徴している。時には迷いながら、時には風のように路地を巡る旅は、イスタンブールを本当の意味で感じるための贅沢な体験といえるだろう。

ところで、なぜ一般旅行者にはあまりイスタンブールの路地の存在とその魅力が伝わっていないのか?
その理由の一つにツアー客が多いということにある。「この混沌と人混みの中、十人前後のツアー客を連れて、一人の迷子を出すこともなく案内することはほぼ不可能」(現地ツアーガイド)。つまり観光地周辺の観光客相手の路地の店しか見ていない(見せてもらっていない)というわけだ。

路地があって街が成り立ち、その中に人間がいて生活があって活気がある…それこそがイスタンブールという都市の特徴。売っているものは玉石混交かもしれない。しかし路地をみるということ、体験することはイスタンブールという街の成り立ちをみることでもあるのだ。

取材・文・写真 山下マヌー

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