森の面積の減少はなぜとどまったのか!~インドネシア 森と島を守る1
水没の危険から首都ジャカルタを守るために移転を進めているインドネシア。しかし移転をしたところで首都機能は守られても、ジャカルタに暮らす1000万の人々が安心できるわけではない。自然の力で都市部に流れ込む雨水の量を調整してくれる森を守ることは、自分たちの安全に直結することであり、文字通り「他人事」で済ますことはできない。その危機感から、それぞれの立場で森と環境を守るために活動をしている人々がいる。
「最も大切なことは教育」。そう語るのは国立研究開発法人イノベーション推進機構(BRIN)のアセップ・サディリさん。 生物多様性保全の専門家でハリムン山の研究家でもある。研究と並行して環境保存の活動を行い、森を守るパトロール隊を循環させ、地元の人たち自然環境について頻繁に語り合う。
「新しいルールができたからといって、全員が必ずしも理解しているわけではありません。一般的に『森は守るべきもの』くらいの意識はあるかもしれませんが、「なぜなのか」というより深いところまで考えている人は少ないと思います。だからインドネシア人が森を守るためにしなければならないことは、先ず教育。森に関する教育カリキュラムを作成し、子供たちに啓蒙していく必要があります。次に森を守る為のボランティアなどの実施。森の大切さを身を持って感じて行くことが大切なのです」。
「1985年、この仕事を始めた頃は活動に対しても反応は薄かった。ところが近年洪水など目に見える影響などがあり、森を守ることへの理解と行為が加速しています。また、現在は小学校から大学の教育カリキュラムに生物学やサイエンスや技術を学ぶカリキュラムがあり、環境衛生、労働環境を意識する環境が作られるようにまでなっています」。
その成果もあってか、幸い森の面積の減少は留まっているという。
「とはいえまだまだ自然環境に対する教育が必要です。国がもっと森を守るためのルールを決めることが大事です。鑑賞ゾーンや立ち入り禁止ゾーンなどのゾーン分けを行い、研究と観光をどうしていくのかを考えていかなくてはなりません」。
なるほど。人間と自然とがどう折り合いを付けて行けばいいのか?取材の最後に、とても大きな宿題を先生から出されたような、そんな気がする。
写真、取材、文:山下マヌー 協力:インドネシア総合研究所