ハワイらしさ満点のローカルショップと、案内人・山下マヌーが目にしたもの〜見つけた、新しいハワイvol.5
コロナ禍で一度は観光客がいなくなったハワイ。その間、何が変わって何が変わらなかったのか? 現地の人たちの温かい「おかえり」のメッセージを通して、これからのハワイの楽しみ方を考えてみませんか。最終回となるvol.5では、懐かしさと新しさが両方感じられるおすすめのローカルショップ情報と、企画の案内人を務めた旅行作家の山下マヌーさんによる紀行エッセイを掲載します。
メイドインローカルなものに感謝してくれる日本の皆さんを、アロハな気持ちで迎えます──エイミー・ホーデル、ベティ・ゲール、ジェン・ジョンソン、メリッサ・ジネラ、「ザ コーブ コレクション」共同オーナー
「私たちが住むノースショアはとても小さなコミュニティ。2018年、4人で期間限定ショップを開く機会があり、そのときからそれぞれの人生が大きく変わりました」と語る仲良し4人組。それぞれが特技を生かし多彩な才能を発揮するこのショップのコンセプトは、サステナブルとゼロウェイストだ。
「ロックダウン中は不安だったけれど、スモールビジネス支援のため大勢の人が集まってくれました。地域の人たちに支えられたローカルアーティストの店は、新たな繋がりを生んでいきます。開業当初、いち早く反応してくれたのが日本の皆さん。ハワイで生まれたメイドインローカルなものに対して、ものすごく感謝と理解を示してくれました。コミュニティをリスペクトしてくれていると言ってもよいかもしれません。日本の人が来てくれなくて本当に寂しい。だけど、きっともうすぐですよね。戻ってきてくれたときには、アロハな気持ちでお迎えさせてくださいね」
エイミーのデザイン&セレクトのコンセプトは「自分の家のように感じられるもの」。メリッサのジュエリーブランドは、ハワイやタヒチのシェルを使ったビーズアートが中心。ジェンが生み出すのは、ノースエリアのビーチで拾った貝やプラスチックを利用して作るサステナブルアート。ベティがワイルアの工場で作るヴィーガンスキンケアは、貴重なハワイのサンダルウッドの使用を許された注目アイテム。
The Cove Collection
59-712 B, Kamehameha Hwy, Haleiwa, HI
+1-808-561-7447
ノースショアの中心、シャークスコーブに残されていたプランテーション時代の住居を店舗に改築。けっして広いとはいえない店内だが、彼女たち4人の個性が表現された作品で埋めつくされ、世界観を十分に伝えている。
古いハワイに新しさを感じてほしい。ヴィンテージはハワイ本来の空気を伝えてくれる──エツコ・カーパー、「バック イン ザ デイ ハワイ」オーナー
「ヴィンテージって、必要なものではないですよね」。ヴィンテージショップのオーナーでありながら、そんな言葉を口にするエツコ・カーパーさん。「機能的でなかったり傷んでいたり。だけど今の時代にないデザインや色使い、質感に惹き付けられる何かがあります」。それは、古いものにこのうえない魅力を見出しているからこそ発することのできる内容だった。
ハワイ島のヒロからワイルアに引っ越してきたのが1990年。「その頃に比べると、ハレイワはすっかり変わってしまいました。観光客相手のビジネスが増え、映画館や「ミウラ」、「アオキ」といった伝説的な店が消えていったのが残念でなりません。ヴィンテージのアロハシャツに描かれた絵の中に昔のハワイの様子を見つけると、古き良きハワイの風景が蘇ってきます。とはいえ、それでもまだノースサイドにはカントリーライフが残っています。大都会のワイキキから車でわずか40分の場所で田舎暮らしを体験する、そんなハワイも楽しいですよ。古いものを探して未来に残す。こうした“ヴィンテージ”な遊び方こそ、新しいハワイの楽しみかもしれませんね」
Back in the Day Hawaii
ヴィンテージアロハのほかにもユーズドのスケートボードの板を再利用したキーホルダー、ヴィンテージアロハの生地で作ったミツロウラップ、コーヒーマグなど、店内は宝の山状態。
67-106 Kealohanui St JC Building, Waialua, HI
+1-808-778-5332
オーナーであるエツコさんの夫は、サーフボードのレジェンドシェイパー、ジョン・カーパー氏。彼が仕事場兼倉庫として使っていた場所に、エツコさんが個人的に集めていた趣味のものを並べて2019年にショップをオープンした。30年以上ものあいだ、彼女のセンスと目利きで選んできた製品は、どれも欲しくなるものばかり。ヴィンテージというと高額な品だと思いがちだが、お手頃なものも多いのがうれしい。
案内人・山下マヌーが見つけた新しいハワイ
“取材中にインタビューした人たちから何度も聞こえてきたのが「リスペクト」、そして「日本人は特別」という言葉。日本からの取材ということもあり、こちらとしては当然“お世辞半分”と捉える。そこで深く聞いてみた、「どうしてそう思うのですか?」と。すると、みんなその理由と答えを話してくれた。
それぞれの答えは一連の記事を読み返してもらうこととして、共通していたのは「ハワイにはいろいろな国をルーツに持つ人々が暮らし、島の外からも大勢の人がやってくる。だからそれぞれのよいところや悪いところがわかる」ということ。なるほど、世界が凝縮されているハワイでは、自分たちが当たり前だと思っていたことでも、実は特別だと思われることがあるのかと、ちょっと嬉しくなった。しかし一方で、そのようなハワイの人たちの想いや期待に、自分は応えていただろうか? きちんと理解し、リスペクトしていただろうか?……ちょっと(いや、 かなり)恥ずかしくなる。”
“今回、久しぶりのハワイということもあってか、出かける前はワクワクよりドキドキ感が強かった。心配と不安が入り交じったドキドキというのは、なんというか随分前にはいていたジーンズを久しぶりにはくような、そんな感覚といってもいいかもしれない。はけるといいな、はけるかな、いやはけるに決まってる。でもちょっと不安……。
久しぶりのハワイはジャストサイズではなく、ちょっと緩めだった。それはいつもより少し長めのスケジュールを取ったことと、観光地への取材を控えめにして、主にローカルエリアに暮らす人たちに話を聞いてまわったせいなのかもしれない。で、思った。ハワイは少し緩いくらいがいいのだ。コロナ禍による“失われた2年間”を経て、リセットされたハワイ。今後訪れる観光客にとっても、ハワイとの付き合い方をリセットするタイミングだ。今までのようにあれもこれもとパツンパツンに詰め込まず、欲張らず。緩く、ユルく、ゆる〜くいくのがよいのだと思う……。
PROFILE/MANOUE YAMASHITA
雑誌編集者を経て、旅行作家、旅コラムニストへ。海外渡航&取材回数は350回超。快適に巡る海外旅行の第一人者。海外関連の著作数は65冊を超え、その多くがロングセラーに。日本で最多となるハワイ本の著作数を誇り、その累計部数は100万部を超える。”