ハワイへ移住してこの地の魅力を発信する人たちの声〜見つけた、新しいハワイvol.4

コロナ禍で一度は観光客がいなくなったハワイ。その間、何が変わって何が変わらなかったのか？ 現地の人たちの温かい「おかえり」のメッセージを通して、これからのハワイの楽しみ方を考えてみませんか。vol.4には、かつてこの地に魅せられ移住を決意し、今はその恩返しのためローカルに貢献したいと願うラム蒸留所のオーナーとアーティストが登場。長らく愛着を持って住んできたからこその今後の展望に、耳を傾けてみては。

かつて日本の移民が拓いたこの場所で、ハワイと日本の繋がりを感じてもらいたい──ロバート・ドーソン＆カイル・ルートナー、「コ ハナ ディスティラーズ」共同オーナー＆ゼネラルマネージャー

「子育てのため、2008年にハワイへ越してきました。育児が終わってもハワイの環境を守りつつコミュニティに恩返しできるような仕事をしたいと考え、頭に浮かんだのがサトウキビ。長い間栽培されていたので、育てるのに適した場所に違いないと。調べていくうち、サトウキビはハワイアンの先祖が、カヌーでハワイに渡った際に運んできた“カヌープラント”だと判明したのです」と話すのは、この地でラムを蒸留するロバート・ドーソンさんとカイル・ルートナーさん。「コ ハナ ディスティラーズ」では現在、5種類のラムを製造している。

「幸いなことにコロナ禍の影響はそれほどでもなく、お客さんの数も減りませんでした。だけど日本人のお客さんの姿が見られなくなったのは、とても寂しくて。実はこの会社を作ったとき最初に考えたのが、日本の人たちに飲んでほしいということでした。理由は、かつてこの場所で日本からやってきた移民たちが、苦労してサトウキビを作っていた歴史を知ったから。日本人にはラムを飲む習慣があまりないから、お土産として買いやすいようにと真っ先に小さなボトルを作りました。ハワイを訪れるさまざまな国の人々の中でも、日本の皆さんは心からこの土地を大切にしてくれる、特別な人たち。自国の文化を大切にし次世代に繋いでいこうとする姿勢を、他の文化に対してもちゃんと繋げてくれる。そんな日本の皆さんが大好きなんです」

世界で初めてコアウッドの樽で熟成させたレアな「コア」は、最初にバーボンを熟成させていた樽で2年2カ月寝かせた後、コアウッドに移してさらに約半年熟成させ完成する。

日々の喜びとスペシャルな感動すべてが絵になる場所。それを皆でシェアできれば──ニック・カッチャー、アーティスト

「作品のモチーフに選ぶのはノスタルジックでシンプルなハワイが多い」と、アーティストのニック・カッチャーさんは教えてくれた。グラフィカルでどこかノスタルジックな彼のアートは、見たことがあるという人も多いのではないだろうか。「たとえばカイルアのモクルアアイランドを描いた作品。過去に見た人もこの先見る人にとっても、変わらず同じ場所にあるものです。世代を通して共感が持てるタイムレスな場所や風景を作品に残したい。いつまでも変わらないハワイの姿を感じられるような風景を切り取って、シンプルに描いていきたいんです」

フロリダからハワイに引っ越してきて15年。日々思うのは「ハワイは本当に特別な場所だということ」と話す。「いつでもビーチや自然を感じることができるし、ハレアカラのサンライズのような感動的光景も。日々の楽しみと、スペシャルな楽しみのどちらも与えてくれる場所です。この素敵でタイムレスな場所を、作品の中だけでなくリアルに残していくにはどうしたらいいのか。それをずっとロックダウン中に考えていました。導き出した答えは、関わるすべての人たちがハワイを上手にシェアしていかなくてはということ。もちろん、同じことがアフターコロナの観光客と地元との新たな関係にも求められているのです」

カイルアにギャラリーをオープンしたのが2年前。開店直後にロックダウンとなり、店を続けることに疑問を抱きつつも継続。「日本の皆さんに早く戻ってきてほしい。そしてなるべく歩き回ってみてください。目的地がどこであっても、向かう途中で見たことのないものや初めての経験に出合えるのがハワイ。冒険や旅の尽きない場所です」（ニックさん）