高まる地産地消のニーズを支える、新顔のハワイ産野菜たち〜見つけた、新しいハワイvol.2
コロナ禍で一度は観光客がいなくなったハワイ。その間、何が変わって何が変わらなかったのか? 現地の人たちの温かい「おかえり」のメッセージを通して、これからのハワイの楽しみ方を考えてみませんか。vol.2では、ビフォアコロナとは大きく変化したハワイの野菜事情にフォーカス。“農業”というワードを聞くと観光客には関係ないように思えますが、実はローカルのレストランメニューに大きな影響を与えるほか、スーパーでも購入可能なんです。
収穫物に共感と感謝をしてくれる日本の皆さんに、マイクログリーンを早く食べてもらいたい──アンソニー・モウ&スティーブン・イー、「クプ プレイス」共同創始者
「かつてハワイでは野菜をほとんど作っていませんでした。その状況を変えたのが、十数年前から名店のシェフたちが始めた“リージョナルキュイジーヌ”。地産の食材を使った郷土料理を作ろうという活動です。そこから、求めに応じて農家が野菜を作るように。この活動が広がりさらに需要が増えていけば、安定的な供給が必要です。そこでぼくたち従兄弟が始めたのが、新たな農法によるマイクログリーン栽培。ハワイ大学の農学部と園芸学部でそれぞれ学んでいたお互いの知識を活かしています。お金がなかったぼくらが確保した“ファーム”は、祖母の裏庭。だからこの野菜は“バックヤード トゥ テーブル”ですね」と二人は微笑む。
ファームではシソ、バジル、ラディッシュほか20種類以上を栽培。水を撒かず循環させるので水量が従来の10%で済む、環境に適したサステナブルな農法で作られる。屋内での栽培と違い、野菜の種類ごとに日照時間を考え、栽培スペースのレイアウトを変えながらベストな状態を保っているのだとか。
「ぼくたちの仕事は観光客とは直接関係ないように思われるかもしれませんが、そうではありません。ロックダウンで野菜の卸がすべてストップした後、アメリカ本土からの観光客は戻りましたが、美味しいものを理解し食べてくれる日本人旅行者が来なくなった。それで、注文が半分以下に。これは衝撃でした。『日本人がいなくても営業自体は続けられる』という考えがある一方、『やっぱり日本の人に来てほしい』と考えるシェフや生産者がたくさんいます。日本人のお客さんが戻ってきてくれたときに備え、どうしたら喜んでもらえるのかをすでに考えていますよ。日本の人々は特別。自分たちのやっていることに共感してくれ、感謝して食べてくれることをぼくたちは知っています。心から早くハワイに帰ってきてほしいと願っています」
彼らの作った野菜は、ハワイのスーパー「フードランド」の野菜コーナーで購入が可能。ハワイの太陽を浴びて育った野菜は「マイルドで美味しい」とシェフたちから評判。写真の料理を提供する「リゴ」のほか、オアフ島の20軒近くのレストランで採用されている。