犬と人が共存する街…伊東楓が見つけたドイツの素敵なところ〜ドイツの優しさに触れる旅vol.6
ノアの箱舟から人間と動物の共存を学ぶ
2021年6月、ベルリン・ユダヤ博物館の別館に誕生した「ANOHA(アノハ)」は、子供たちが遊びながら“サステナブル”を学ぶ博物館。同館のコンセプトである「ノアの箱舟」をモチーフにした木製の巨大な船には、大小さまざまな150体の動物の像が置かれている。
消防用のホースで作られたカバなど、動物のオブジェはいずれも、リサイクルの材料と日用品が使われ、15人のアーティストたちによって作られた。

大きな水槽のコーナーでは、子供たちが自ら作った船を槽に浮かべて洪水のシミュレーションを体験。巨大なアナコンダの上に登ったり、ヘビを模した網の遊具の中を潜ったりと、子供たちが遊びながら、人間と動物がどのように共存していくかを学べる。

ANOHA
Die Kinderwelt des Jüdischen Museums Berlin
営業時間:火~金曜9:00~13:00、土・日曜・祝日10:30~16:00
定休日:月曜日(祝日以外)
入場料:無料
来館前にオンラインショップにて時間指定チケットの予約が必要。大人のみの入場は、ガイドツアーに申し込む必要がある。
Fromet-und-Moses-Mendelssohnplatz 1,10969 Berlin
案内人・伊東楓が移住で見つけたドイツの“好きなところ”
ドイツに移り住んで、1年が経った。ドイツは、場所によって雰囲気ががらりと変わる国だ。私が住むベルリンも面白いけれど、少し足を延ばせば、いろんな文化の違いを肌で感じられる、この環境が私は好きだ。さまざまな出来事が起こる日々のなかで、最近はドイツのいいところが鮮明に見えるようになってきた。
まず、異国への偏見が少ないこと。私自身、ドイツに移住してから偏見や差別を受けたことがない。移民の受け入れに対しても積極的で、多様な国の文化やLGBTQ+に対する考え方も進んでいるところが、ドイツの素敵な特徴のように思える。

さらに、初めてドイツに足を踏み入れたとき、人と動物との距離の近さにはとても驚いた。この国では街の至るところで、人と犬が共存している。公共交通機関やデパート、カフェなど多くの場所に、犬と一緒に、自由に出入りすることができるのだ。ドイツにはペットショップもなく、動物愛護に関しては最先端だ。ほかにも、環境に配慮したサステナビリティへの取り組みもこの国は進んでいる。
もちろん、いい部分ばかりではなく、悪いところも少しずつ見えてくるようになったが、アーティストとして世界に拠点を変えた今の自分にとって、この国はとてもフィットしている気がするのだ。異国での生活は、決していいことばかりではない。楽な選択肢はひとつもないし、孤独と不安に押しつぶされそうになる夜を何度も乗り越えてきた。それでも私が迷わずにいられるのは、手を差し伸べてくれる心優しいドイツ人たちがいるからだ。
マンションの契約やビザの更新などの場面では、彼らのほうから積極的に、私がより長くドイツに住むための最善策を提案してくれる。私の意思を理解しつつ、ときどき主張が強すぎるときもあるが、それも国民性(笑)? でも、そんな優しさに触れるたび、今はここが私の居場所なのだと感じるのだ。

今回の旅では、さらに深くドイツの文化に触れた。ドイツ企業の丁寧な職人技を目の当たりにし、日本人よりも日本の文化を愛する海外の視点を知り、私がこの国で成し遂げたいことは何なのか、日本人として世界に何を発信していきたいのか、改めて考えさせられた。
自分の直感に従って決めた移住先“ドイツ”だったが、正解だったのだろうと今は思っている。

伊東楓さん×UTme!コラボが2023年1月、ベルリンのUNIQLOグローバル旗艦店タウエンツィーン店で実現します。作品をのせたTシャツやトートバッグに出会えます。
※UTme!は、写真や絵を使って自分だけのオリジナルTシャツを簡単に作れるサービスです。「ユニクロタウエンツィーン店」Tauentzienstraße 7B/c, 10789 Berlin, Germany
写真:yOU コーディネート:ケン若月 取材・文・編集:服部広子