アル・カポネの足跡を辿る　シカゴの伝説となりつつある“マフィア”と名物ピザ

「シカゴ」と聞いて、まず浮かぶのは「マフィア」や「カポネ」といった、禁酒法時代のアメリカ暗黒時代のイメージか？

よほどの建築好き（もしくは業界関係者）でなければシカゴ＝建築の街というより先に、カポネが浮かぶに違いない。実際、自分もそうだ。シカゴといえばマフィア街というのが先ず浮かぶ。当然ながらその時代を体験したというわけではなく、映画やドラマの影響で刷り込まれてしまっている。

残念ながら（というのも変だが）、現在シカゴからマフィアの姿は消えている。消えてしまうとなんだか物足りないというか、自分のシカゴへの期待を裏切られた感じにもなって、その残像を追ってみたくなる。実際にそのように考える人も少なくないのか、マフィアはシカゴにおいてある意味観光資源の一つになっている。

アル・カポネが頻繁に訪れたとされるジャズクラブ、グリーン・ミリオンズ・バー（Green Mill Cocktail、いくつかのカポネの旧邸宅跡、ナイトクラブのスマート・バー（Smart Bar）…などなど、アル・カポネの活動に興味がある方にとって興味深い場所がちゃんと残されており、カポネを売りにしている。

そんなカポネと縁のある場所の中から、今回出かけたのは「エクスチェッカー」。カポネが密造酒やギャング活動を組織していた時代、この店は中心的な場所として知られていることに加え、お酒だけでなく食事も美味しいという評判を聞いたから。

100年ほど前、ここはアル・カポネが経営する闇酒場スピーク・イージーの一つで、1920年代から1930年代にかけてカポネの支配下にあり、カポネの拠点とされたという伝説的なスピークイージー（密造酒販売店）。

入口が狭いのは突然の警察の捜査から逃れられるようにしたものだし、店内が奥まっていてさらにいくつかの小部屋に分かれているのも、同じ理由から。ここ数年、日本でも増えているスピークイージースタイルの店だが、元々は禁酒法時代にカポネたちマフィアが警察の目をごまかすために考えたスタイル。

見せてはもらえなかったが、地下室から脱出するための「エスケープドア」も当時のまま残されているという。

そんなカポネの残像を感じつつ食べるのは、ディープ・ディッシュ・ピザと柔らかい肉のスペアリブ。どちらも店の人気メニュー。マフィアとディープ・ディッシュ・ピザという、ふたつの“シカゴ名物”を一度に体験できる、ある意味貴重な場所でもあるのだ。

にしても酒類密輸、賭博、売春など悪の違法ビジネスのほぼ全てを牛耳っていたカポネ。Tシャツになって売られる時代が来るとは、当時誰が想像できただろう？

写真：尾嶝太
取材・文　山下マヌー