鉄道ファンを魅了する世界最長の高架路線とダイヤモンドクロス…シカゴ鉄道“L”
シカゴの鉄道路線シカゴ・トランジット・オーソリティ(CTA)、通称「エル(L)」。
「L」が愛称として使われるようになったのは、路線の多くが高架鉄道として建設されたことに由来している。実は最初は「L」ではなく「EL」。シカゴの鉄道路線は、地上を離れて高架橋(elevated structure)を通ることが多いため、「elevated」という言葉をより短くしてか、当初は「EL」だったというわけ。
現在、このように都市部を高架で走るのは全米ではシカゴだけ。
また高架路線としては世界最長だといわれている。そういう事実を知るとシカゴは乗り鉄や撮り鉄の人々にとっても、なかなか魅力的であることには違いない…と書いていたら、すでにプレイステーション「Railfan」には Brown Line が収録されていたことが判明。鉄道ファンにはすでに知られていたのか?!
高層ビルの合間を縫って走るシカゴの街の風物詩的な存在でもある「L」を、普通ではない場所から撮影したいと辿り着いたのが、ダイヤモンドクロッシングと呼ばれるジャンクション。4方向から電車がやってきて4方向に散らばっていく、かなりレアな場所。
それぞれの方向からやってきた電車同士、すれすれのところですれ違っていくという、まるでプラレールのような光景が撮影できると考えていた…が、そんな期待は甘かったということにすぐに気づかされる。そうそう都合よく電車がすれ違ってくれないのだ。
「来た!」と思って待っていると他の方面からの電車は訪れず。縦から来たと思ったら、横からの電車は現れず、横から来たと思ったら縦からの電車は現れず。その繰り返し。
結局その日は諦めて後日改めて出直し、マイナス9度という極寒の早朝に2時間粘って、ようやく撮影できたのがこの写真(余談ですが、線路に雪がある写真とない写真があるのは、撮影日が違うため)。
ところで、「L」は車両間の通り抜けができない。つまり乗った車両から他の車両へは電車から一旦降りないと移動ができないということ。これは不便だ。さすがに車両を改良すればよいのにと思っていた。
でもそうしない理由が、ダイヤモンドクロッシングで車両を俯瞰して見れたことで理解できた。急カーブを曲がり切る際、ご覧のように車両と車両の間の隙間がほとんどなくなる。つまり連結部に余裕がない。だから通り抜けさせるためのスペースが作れないのだ。開業1892年当時にはそれで良かったのだ。
「L」に観光客として乗るなら、乗るべき車両は先頭車両に決まり。先頭車両の運転席後ろの窓にピッタリと顔を押し付け(幼い頃に電車に乗ったあのときのように)窓からの景色を眺めるのが楽しい。
複雑に交錯する線路の上を高層ビルとビルの合間を縫って走る「L」。2,50ドルで楽しめる観光電車なのだ。
1892年に開業し、現在では8つの路線と145の駅を持つ大規模なネットワークとなった「L」の駅の中、現存する最古の駅がQuincy駅。看板などの一部は変更されたが、殆どは1897年のオープンのオリジナル。
ホームはなんと板張り(もちろん補強は怠りなくされているのだろうけど)ということに驚く!シカゴはビルだけでなく、電車も駅も100年を越えて愛され大切にされてきたのだと実感させられる街である。それは一度大火で全てを失ったという反省と後悔が、今を生きる人達の間にも活かされているからなのだろうか。
写真 尾嶝太
取材・文 山下マヌー