「治安が悪い」は古いイメージ? Googleも目をつけたシカゴ 中心街の復活劇
新しいシカゴを感じるならウエストループエリアへ行くといい。そんなことをいうとしばらくシカゴに行っていない人からすれば「危険で近寄りたくない場所なのに何故?」、と訝(いぶか)しがられるかもしれないけど…?
シカゴでは街の中心部をLOOPと呼び、その西側に位置するからウエストループ。ここは19世紀後半から20世紀初頭にかけて多くの工場や食肉倉庫などが立ち並び発展した場所。移民労働者や労働者階級の住宅地としても発展し、多様な文化やコミュニティが形成されていた。
ところが1960年代から1970年代にかけ、アメリカ全体で工業の衰退や都市部からの人口流出が進み、ウエストループもその影響を受けることに。工場や倉庫の閉鎖が相次ぎ、経済活動が停滞。犯罪率が上昇し、インフラの老朽化も進み社会的問題が増加。
いよいよ20世紀後半になると、物流技術の変化や郊外への移転などにより、ウエストループの街としての機能は衰退。
この手の街の衰退話はウエストループに限らない。NYのSOHO、ブルックリン、ホノルルのダウンタウン、日本の清澄白河だってそうだ。同時にこれらの街の共通しているのは、衰退からの復活を遂げているということ。ウエストループもまた然り。
1990年代後半から2000年代にかけて、ウエストループは再生の兆しを見せ始める。市の再開発計画などにより古い倉庫や倉庫が再利用されるようになり、アーティストたちが移住。アートスペースやオフィスビル、住宅などに生まれ変わり徐々に活気を取り戻し始める。現在のウエストループは、かつての工業地帯としての側面を残しつつ、新たな魅力を持つ街として再生。アートや文化の中心地として注目され、多くの若者やクリエイティブな人々が集まるエリアとなりつつある。
とくに賑わいを見せているのはFulton Street沿い。このエリアの復活のきっかけは、Googleがオフィスを移転してきたことから。
その後ユニオン駅の改修、シカゴの有名飲食店を集めたTime Outマーケットが登場。それらを核としてギャラリーや劇場、ハーマンミラーのショールーム、アートスペース、ミシュラン掲載店などが増えていき、アーティストやクリエイティブな人々が集まるエリアへと発展。若者やクリエイティブな人々の注目を集めるように。
住環境の改善や文化的な活性化が進み、新しい魅力を持つようになった現在のウエストループは、かつての工業地帯としての面影を残しつつ、新たな魅力を持つ街として再生。注目を集めるエリアへと変貌、復活を遂げた。
街の中心Loopエリアに建つ100年を超える歴史的建造物とWest Loopエリアで起こり始めている新しいうねり。その両方が相まって、新しいシカゴの魅力を作り出している。
写真 尾嶝太
取材・文 山下マヌー