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八重山諸島を一望 野底マーペーに登って知る石垣島の悲恋伝説

八重山諸島を一望 野底マーペーに登って知る石垣島の悲恋伝説

TRAVEL 2025.06 八重山特集

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標高約280メートル、石垣島で2番目に高い山。通称“マーペー”と呼ばれる野底岳。頂上から360度のパノラマ絶景が見られることで知られる、石垣島の観光スポット。「翼の王国」6月の八重山特集の取材はこの山に登ることから開始しようと決め、石垣島到着後に空港から直行。標高約280メートルなら「たいしたことはない」と考えていた。が、それがそうではなく…(因みに標高“約”280メートルとしているのは、「282メートル」、「284メートル」その他諸説あるため)。

山頂までのルートは2つ。一つは麓から約1時間かけて登るコース。もう一つは車で山頂付近まで行き、そこから登るという今回の我々が選択したコース。ガイド本の類には「約20分で山頂」と書いてある。「標高280メートルの山頂付近からスタートするということなら、100メートルもない標高の距離を20分で登る」という計算が成り立つ。100メートルという距離は史上最速のウサイン・ボルトなら9秒58、普通の人なら約2分(不動産広告では徒歩1分は80m相当とされている)。それを「20分かけていく」というのは、なかなか微妙?考えようによってはなかなかの難易度なのではないのかと、不安な気持ちにさせるではないか。

予感は的中。結構な勾配、急斜面が続く。おまけに前日までの雨が祟り、足元は緩い。文字通り地を這うようにして登らなくてはならない場所もあり、事前に読んでいた「3歳の子どもでも登っている」という、とある記事の一文を恨んだ。手すりや階段なんてものはない。途中、手すり代わりにロープがかけられている程度。ロープがない箇所は木の枝を掴みながら登る。木の枝が折れたりなんかすると、ヨロヨロと倒れそうになる。「こりゃぁ20分かかるわけだ」と思った。実際12時42分に登頂を開始し、13時4分山頂に着いている。「3歳の子どもが登っている」がホントかどうかは怪しいのだが、「所要時間20分」という情報は正しかった。

コースからは、全くといっていいほど景色は期待できない。鬱蒼と茂る緑が迫るのみ。途中、木々の間から絶景が楽しめるなんてことはない。ひたすら滑り落ちないよう足元に気を配り、ロープと木を掴んだ手を離さないよう注意を怠らずに一歩一歩登るのみ。今回山頂まで同行してくれた、心理占星術家のマリユドゥさんは、三線を携えているので、さらに困難を極めたものになってしまい、申し訳ない気持ちになる。果たして頂上着。当日は曇天だったものの、突然開けた空間からの景色は十分に絶景。晴れていれば南には竹富島、西表島、黒島などの八重山諸島の島々が見渡せるというのも納得。

山頂からの絶景のほか、マーペーの存在を知らしめているものがあり、それが悲恋伝説。かつて黒島に住んでいた青年カニムイと娘のマーペー。結婚を決めていた二人だったにもかかわらず、当時の王朝の命により黒島の中道から線が引かれ、線の片方に住んでいた住人を石垣へと強制移動。それにより石垣の野底へと移されたマーペー。カニムイへの募る思いから石垣で最も高い於茂登岳から黒島を見ようとするが、しかし見えない。ついに精魂尽き果てたマーペーは石になってしまい、カニムイの住む黒島の方角を見て座っている…。そんな悲しい恋の物語を語ってくれたのはマリユドゥさん。心理占星術家でもありながら三線も嗜む彼が弾くその音色に、(20分足らずとはいえ)山頂までの厳しい道のりを忘れ、しばし聞き入りつつ眺めたマーペーからの景色。いわゆる八重山ブルーの空と海ではなかったものの、しかしそれが逆に幻想的な色となり、いつまでも想い出深い色となって心に残っていくのだ。

取材・文 山下マヌー 
写真 高砂淳二

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