あるがままを受容する…土の潜在力を生かす沖縄・南城市で出会ったやちむんの世界
工芸、食、芸能、祭事……独自の文化が育まれ継承されている沖縄。
豊かな海=「美ら海」に囲まれた沖縄には、同時に豊かな土壌も広がっていて、やちむん、赤瓦、泡盛、野菜など、その土が育んできた文化や産物は魅力に溢れている。
「沖縄のテロワールは、自分で探さなければ見つからない」(小島圭史シェフ)。沖縄の風土と真摯に向き合い、時には折り合いをつけながらそれを知恵として寄り添う人々の現場を訪ねて辿り着いた、未来につながるテロワールとは。
美ら海こそがこの土壌を育んできた
沖縄というと赤土のイメージが強いが、実は性質の異なるいくつもの土壌が分布している。昔から人々はその性質を知り、向き合いながら暮らしてきた。
畑地では、透水性の高い島尻マージに粘土質で水はけの悪いジャーガルを客土して保水性を高めたり、琉球赤瓦の断熱性や調湿性は科学的に証明される以前から周知されていた。
沖縄の土壌の基盤は海。沖縄の美しい海で育つ珊瑚や海洋生物が、長い年月をかけて堆積し、隆起して形成された琉球石灰岩や、海底に堆積した砂岩や泥岩だ。だから沖縄の土壌は美ら海で生まれ、育まれてきた。
沖縄の代表的な土の種類

【マージ】砂岩・泥岩の堆積層由来の国頭マージは酸性で雨が降ると土壌流出が発生しやすい。サトウキビやパイナップル等のフルーツの栽培に適している。琉球石灰岩由来で養分を多く含む島尻マージは、水はけがよく根菜類の栽培に適している。

【クチャ】琉球石灰岩由来の微細な粘土質の土。水を含むと粘土に、それが乾燥すると非常に硬くなる。

【ジャーガル】クチャが風化してできた、養分とミネラル豊富な土で野菜の栽培に適している。
土は人生そのもの 大事なことは土に教えてもらった
土、火、水で表現する焼き物に魅力を感じこの道に進んだ古村其飯(こむら・きはん)さん。本島南部で採れるジャーガルという個性豊かな土との出会いは、素材との向き合い方を大きく変える。こちら側の強い意志で作陶すれば捻じ伏せられ、気付けば土に寄り添って理解するのに10年の歳月が流れていた。
寄り添い理解すれば“土殺し”※という乱暴な行為に抵抗を感じるようになった。しかし、土の粘性を引き出すこのプロセスを省く作陶は容易ではなかった。轆轤(ろくろ)の回転を下げて指の感覚に集中し、土の成りたい形へ。成形時に土に無理を与えなければ、炎に負けず見事な色彩を奏でてくれる。この土の底の見えない潜在力の高さに驚かされる。「現状受容」という禅のコトバがある。なるだけ私を排除して土の向かう方向へほんの少し手を加える、それが更にこの土の魅力を引き出す手立てだと語ってくれた。
※「土殺し」:ろくろ成形の前に土の粘性を引き出す行為。

【上】予期せぬ色が出ることも。赤、黄、青の3色が同時に出たのは初めてという花入れ。


鶏舎だった建物を利用した工房。北欧のヴィンテージ家具や照明と其飯さん手作りの台などが混在する。週に5日はここで作業をしている。水は湧き水を使用。
荒焼作家 古村其飯(こむら・きはん)
那覇市首里出身。「荒焼※をやろう」と決め、25年ほど前にジャーガルが採れるこの地に出会った。
Instagram:@kihan0125
※「荒焼(あらやち)」:沖縄のやちむん(焼き物)には釉薬(うわぐすり)をかける「上焼(じょうやち)」と釉薬をかけない焼き締めの「荒焼」がある。荒焼のほとんどが貯蔵・熟成用の壷や甕などの大物。
撮影 大湾朝太郎
取材・文 齊藤素子
編集 川原田朝雄
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