“温泉が出ない町”が見違えた 大分・豊後大野の廃校リノベが全国から人を呼ぶ

大分にも温泉の出ない町がある。山を越え峠を縫って進むと、標高630mほどの地に木造の小学校らしき校舎がそびえ立つ。廃校しているが、現在はリノベーションされたゲストハウス。海外より遠いかもしれない、と自称するこの場所に、全国から人々がホリデーにやってくる。お目当ては大自然でのサウナ。温泉が出ない町はここ5年で「サウナのまち」として息を吹き返したというのだ。
サウナで全国の人を呼ぶ豊後大野に
発起人は高橋ケンさん。おんせん県いいサウナ研究所・所長を務め、LAMP以外にも豊後大野(ぶんごおおの)市でサウナの創設を呼びかけてサウナ集落を作り、観光の幹を太くした。
「もともとは東京の出版社で10年働き、2015年に現在所属する会社に転職し、WEBメディア作りを志しました。あるとき大分県のイベント集客の仕事があり、この場所に出会ったんです。なんにもない、廃墟ともいえる状態の建物を前に、はじめは断りました。でも地方が困っていて自分にできることがあるならやりたいと思い、会社から再度提案された際に移住を即決。“リビルドサウナ”を作ったのは、2019年、サウナにハマったのがきっかけで、すぐに建設を行動に移していました。“まち”にしたのは、そのほうが連携できてこの地域全体が盛り上がる、豊後大野でのお客さんの滞在時間が長くなるなと思ったんです。サウナ飯を謳(うた)うことで飲食店も巻き込んで、話題にした。地方で何かを始めるのは大変ですが、コロナ禍の真っ只中で、飲食店や県や市も一丸となって町づくりをできたと思います」。
唯一無二と言える、自然の温もりだけで作られた治癒力を感じられるサウナ。子どものようにはしゃぐ大人たちの声が校庭に飛び交う。

校庭にあるリビルドサウナのエリア。サウナはフィンランド式が2つで右にあるプールが水風呂。アウトドアサウナの醍醐味は水風呂と外気浴! 豊かな自然の中で多幸感を味わってほしい。校舎だったであろう建物は、廊下や階段もそのまま残してリノベーション。体育館をレセプション兼食堂に。暖炉を囲んで団らんできる。客室は全9部屋あり、最大70名の宿泊が可能。

「 “リビルドサウナ”の由来は3つ。『全て廃材でサウナを作りたい』ということと『ここにあった五右衛門風呂を壊してそれも廃材にして作り直す』こと、『かつて3000人住んでいた町を、薪の火を灯すことで“ 再構築” する』という意味合いを込めています。『サウナのまち』は手段であり、この町のゴールは教育と福祉の充実。これはフィンランドから学んだ思考です。住民の幸福度が上がり、町が存続していくのが理想」と語る高橋ケンさん。

子ども達のプールの後は防火水槽として使われたのち、廃墟となっていた水溜めを水風呂に。地下水が汲み上げられ循環している。




LAMP
サウナ・ウェルネスプロデューサー 笹野美紀恵
実家は、“サウナの聖地”として知られる静岡「サウナしきじ」。ホテルの温浴施設をプロデュースするほか、医療機関とオリジナルの薬草入浴剤を共同開発するなど、未病予防にサウナを活用する取り組みも行っている。
撮影 藤原次郎
コーディネート 菊池智子
取材・文・編集 中野桜子
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