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輪島塗と珠洲焼が支える復興の心 能登半島地震と豪雨を乗り越える営み

輪島塗と珠洲焼が支える復興の心 能登半島地震と豪雨を乗り越える営み

TRAVEL 2024.12  能登特集

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堅牢優美―。華やかさと壊れにくさを兼ね備えた、輪島塗を讃える言葉です。壊れにくいばかりか、たとえ割れたり剥(は)げたりしても何度でも修復し、美しさが甦る、それが我が国を代表する伝統工芸・輪島塗です。

輪島塗の老舗塗師屋「藤八屋」、その三代目が生み出した逸品『波花』(旧称:ウェーブボウル)。日本海の波をモチーフにした、柔らかなうねりが美しい

今年の元日。大地震に襲われた能登は、甚大な被害を受けました。少しずつ、復旧に向かって歩み始めた9月、今度は豪雨災害が……。「それでも、私たちは挫(くじ)けません」と案内人は力を込めます。

古(いにしえ)より連綿と続いてきた美と恵みを「必ずや未来へ紡いでいく」と。そう、修復可能な輪島塗のように、能登は何度でも、何度でも立ち上がります。

名だたる一流店がこぞって愛用する輪島塗

明治時代から続く輪島を代表する「塗師屋」(漆器の製造・販売業者)の一つ。得意先には「野田岩」「すきやばし次郎」といった一流店が名を連ねる。サミットの晩餐会で、藤八屋の引盃(ひきさかずき)が乾杯に使われたことも。

朝市通りの一角にあった本店は地震直後の大火で全焼してしまったが、倒壊を免れた山本町の工房で3月下旬、製造を再開。

三代目で、親方であり伝統工芸士の塩士正英さんは「願わくば10年先も堅牢でお客様に喜ばれるものを作り続けていたい」と語る。

「輪島塗の信用を次代に繋ぐ責任……簡単には投げ出せません」(正英さん)、「改めて思い知りました。私たちは何より漆が大好きなんだと」(妻・純永さん)

輪島塗 藤八屋(とうはちや)

石川県輪島市山本町脇田34-5

https://www.tohachiya.com

「いまや地域の誇り、途絶えさせるわけにはいかない」

「実用よりも、美を追い求め続けた、それが珠洲焼(すずやき)です」

游戯窯の篠原敬さんはこう胸を張った。12世紀中頃、能登半島先端で生まれた珠洲焼。中世日本を代表する焼き物だが15世紀末に廃絶し「幻の古陶」に。1970年代末に復興し「灰黒色」と呼ばれる美しい黒い焼き物(上写真・中央)が蘇った。「復興して四十年余、やっと少しずつ地域の誇りとなった珠洲焼を、簡単に途絶えさせるわけにはいきません」

昨年秋に完成した薪窯は一度も火を入れることなく、地震で崩壊。「でも、命が助かったからOK。窯はレンガを積み直して、また作ればいいんです」

「昔は大陸の文化が直に入る栄えた土地。珠洲を再びそういう場所にしていく、珠洲焼はその一翼を担うんです」

珠洲焼 游戯窯(ゆげがま)

石川県珠洲市正院町平床

090-1315-4397

案内人 浦出真由(ヌシヤ株式会社代表)
取材・文 仲本剛
撮影 須藤明子

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