雪国で150年佇む家こそ真のラグジュアリー 世界が注目する未来の宿のかたち
雪国で150年を生き抜いた家と人の寄り添い。今また物語る
南魚沼の里山を行くと、ずっしりと、そしてひっそりと佇む築150年の古民家に出会う。豪雪に耐えた梁と柱は力強く、吹き抜けの天井の壮観さに誘い込まれる。古民家と北欧デザインの家具が響き合い、新たなラグジュアリーを生み出す。「里山十帖」の信念は、里山の景観を変えず、この家の持ち味を壊さないこと。
レセプション棟は、貴重な総欅・総漆塗り。高さ10 メートルの吹き抜けは圧巻。一棟貸しも設え、6棟の古民家をリノベーションしている。サウナ付きの棟も人気。オーナーは雑誌『自遊人』の編集長でクリエイティブ・ディレクターの岩佐十良氏。
雪国で150年を生き抜いた古民家を守るのは容易ではない。繊細な手入れを重ねてこそ、今では得られない古材のエネルギーが息づく。スリッパはなく、素足で床の温もりを感じ取る。木の肌合いが場所ごとに異なるのを感じ、この家の歴史や呼吸を感じる。一部屋ごとに異なるデザイン、季節ごとの食材でうつろう料理、窓の外の里山の表情など四季を通してそのすべてを味わいたくてたまらなくなるのだ。
「早苗饗 SANABURI」は、桑木野恵子シェフが南魚沼の風土・文化・歴史を表現することを目指した「ローカル・ガストロノミー」。雪国ならではの発酵・保存食文化を現代の味覚に落とし込み、発酵部屋で味噌や発酵調味料を醸造。

万願寺とうがらしと合わせた牛のベーコンも手作り。ソースは摘みたてのベリーとハッカ。甘鯛は佐渡産。生のまま食べられるなすは驚くほど甘い。
『ミシュランガイド』1 つ星、『ゴ・エ・ミヨ』スコア15.5 &テロワール賞、『BestVegetables Restaurants』で世界13位に輝き、今、世界で注目を集める。海外から研修に来る若者も多い。

里山十帖
桑木野恵子
美容業界から転身し、オーストラリア、ドイツ、インド等を巡って料理を学ぶ。東京のレストランを経て、2014年里山十帖に在籍。2018年料理長に就任。以来、ミシュランをはじめ、数々の賞を受賞。
空き家のマイナスをプラスの空気に変え、町に恩返しをしたい

新潟市西部の岩室温泉。静まりかえった温泉街に、2013年一つの灯がともった。オーナーシェフ熊倉誠之助さんは、築150年の古民家「小鍛冶屋」をリノベーションし、郷土食文化を取り入れたイタリアン「KOKAJIYA」を開いた。料理は独学。沖縄でバーテンダーをしていたが、家庭の事情で帰郷したのを機にこの古民家と出会い、それが取り壊しの危機にあった小鍛冶屋を救うこととなる。
「せっかくやるならミッションやビジョンを持って町に流れを作りたい」と思い買い取った。腰を据え料理と向き合うほど、地元の生産者や新潟の食材に魅了された。県外の客にも喜ばれるよう地物にこだわり、あくまで食材が主役。「ここはまだまだポテンシャルのある場所。空き家のマイナスをプラスの空気に変え、町に恩返しをしたい」と語る。
前菜からデザートまで地物をイタリアンの技法で生かした料理の数々。




「古民家だけど過ごしやすい」空間づくりを心がける。2022年には、並びの古民家をもう一軒購入し『一棟貸切りの宿 岩室久元』を開業。

灯りの食邸 KOKAJIYA
熊倉誠之助
1979年新潟県生まれ。琉球大学卒業後、沖縄でバーテンダーとして経験を積み「cafe & bar RitMo」をオープン。2009年に新潟に戻り、出張料理人として経験を積む。2013 年に「灯りの食邸 KOKAJIYA」を開業。
撮影 金子斗夢
取材・文・編集 中野桜子
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