メインコンテンツにスキップ
阿蘇の悠久の記憶を土に刻む 火山灰も火砕流も火山と自然の全てを陶芸に

阿蘇の悠久の記憶を土に刻む 火山灰も火砕流も火山と自然の全てを陶芸に

TRAVEL 2025.03 熊本特集

share

土と向き合い、命を吹き込む。山下太さんは、阿蘇の広大な自然を慈しみ、その鼓動を作品に宿す。彼が手にするのは、土だけではない。世界有数のカルデラが生んだ独特な土壌、火山がもたらす灰や岩石、湧き出る水。山々を彩る草木さえも、創作の一部となる。常識や伝統に縛られず、独自の試行と改良を重ねながら、じっと向き合う。幾重にも重ねられた天然の釉薬(ゆうやく)の色彩、風合いは誰にも真似することができない。

山下さんの陶芸は土作りから。阿蘇山の土は、採取する場所によって成分が異なり仕上がりが変わるので、作品を想像しながら使い分ける。なかには推定40万年前の噴火による火砕流の土も。土からなめらかな粘土に仕上げる。

工房には、小さな神棚がある。そこには、この地で見つけたという先人による土器のカケラが静かに置かれる。毎朝、彼は手を合わせ、敬意を込めて祈る。数十万年の時を超えて続く、大自然と人とのつながり……その流れの中に生き、今日もまた、阿蘇の大地と語らいながら作陶する。

釉薬はすべて阿蘇の自然からとれる天然のものにこだわる。色、質感など様々に仕上がる。重ねて何度も焼きながら仕上げていく作品も美しい。
ギャラリーに並ぶマグカップ。自然の色合いであり手作りのため、同じ柄は一つとしてない。

まずは成形し、削りをして素焼きする。ここから何度も焼成を繰り返すこともあるが、納得がいくまでこだわり続ける。

直径40cmはある大作も。レストランからのオーダーも多い。

阿蘇坊窯

熊本県阿蘇市西小園624-1

Instagram @futoshiyamashita

山下 太(やました ふとし)

福岡県生まれ。20代前半でアジア、ヨーロッパなどを放浪し、紆余曲折あって帰国。陶芸を志し、5年ほど小石原焼で修業をする。2002年に自らの窯元「阿蘇坊窯」を開設。その際に、幼少期に両親に連れられて遊んだ記憶のある阿蘇を選んだ。

熊本への翼
熊本へは東京(羽田)などからANA便で阿蘇くまもと空港へ。
※運航情報は変更になる可能性があります。最新の情報はANAウェブサイトをご確認ください。

撮影 神林環
コーディネート 鬼崎翔大
取材・文・編集 中野桜子

翼の王国のアンケートにぜひご協力ください。ご協力いただいた方の中から抽選で当選した方にプレゼントを差し上げます。

熊本のおすすめホテル