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熊本・阿蘇の地下水が育む奇跡 日本の渚百選の景勝地から秘境まで

熊本・阿蘇の地下水が育む奇跡 日本の渚百選の景勝地から秘境まで

TRAVEL 2025.03 熊本特集

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御輿来(おこしき)海岸は、「日本の渚百選」「日本の夕陽百選」に選定された景勝地。有明海は干満の差が激しく、潮が引いた海岸に風と波による砂の曲線が現れ「干潟」となる。御輿来海岸の名前は、景行(けいこう)天皇が九州遠征の際、三日月形の砂紋のあまりの美しさに御輿を駐(と)めて見入られたという伝説よりつけられた。

神々が授けた「水」と「土」の贈り物

壮大な自然と生命が脈々と息づく大地、熊本。日本最大、そして世界でも稀有(けう)な「地下水都市」であるこの地は、清らかな湧き水の恩恵にあふれる。県内には湧水池(ゆうすいち)が1000箇所以上。その地下水を支える大地は、約27万年前から続く阿蘇山の噴火によって形成されたカルデラ地形だ。火と水が織りなす独特な地質である。

歴史的背景を辿りながら地を踏むと、この何十万年もの時をかけて育まれた風土は単なる偶然ではなく、まさに神話や伝説に彩られた神秘であろうと、圧倒される。

水の神が授けた、海に浮かぶ神社の伝説と水源地の奇跡の復興

「水のささやき」を感じられる「永尾剱神社(えいのおつるぎじんじゃ)」は、潮の満ち引きによってさまざまな表情を見せる。713年の創建には伝説がある。昔々、海に棲(す)む神霊、海童神(わだつみのかみ)を乗せた巨大なエイが現れ、宇土半島を乗り越えようと陸に上がったが巨大な網で行く手をさえぎられ、引き返すこともできずこの地に横たわった。そこがエイの尾にあたることから「永尾」と地名が付いたという。

永尾剱神社

熊本県宇城市不知火町永尾658

Instagram @einootsurugijinjya

胃腸病にご利益あり。この海上に旧暦8月1日の未明に現れる不思議な灯火の現象「不知火(しらぬい)」の観望も毎年人気。景行天皇がその昔、航行中にこの灯火を目指し無事生還できたという説も。

水の恩恵を受ける熊本は、水景も素晴らしいが水道水源もすごい。蛇口をひねればミネラルウォーターが出る。熊本市は約74万人の水道水源を100%地下水でまかなっていることから、日本一、そして世界でも稀少な地下水都市といわれるほど。

各地に豊富な湧水地や河川、湖沼がある。南阿蘇の「塩井社水源(しおいしゃすいげん)」を訪れ、朝日を浴びるブルーグリーンに目を見張る。信じ難いことに2016年の熊本地震の後、水が止まり、枯れ果ててしまったという。人々は悲しみ、祈り、賽銭箱の下にメッセージを寄せた。すると、2年もすると突然またなみなみとした豊かな水源が戻ってきたというのだ。これには御祭神である罔象女神(みつはのめのかみ)の奇跡を感じざるを得ない。

塩井社水源

熊本県阿蘇郡南阿蘇村中松1655

塩井社水源は、塩井神社の境内に湧き出る水源。毎分5トン、一日に7200トンも流出する、飲み口のまろやかな軟水で、不老長寿、諸病退散の神水とされる。環境省が定めた「平成の名水百選」に選ばれている水源の一つ。

熊本への翼
熊本へは東京(羽田)などからANA便で阿蘇くまもと空港へ。
※運航情報は変更になる可能性があります。最新の情報はANAウェブサイトをご確認ください。

撮影 神林環
コーディネート 鬼崎翔大
取材・文・編集 中野桜子

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