制作を見学できる唐津焼の窯元「隆太窯」~唐津「土の恵み」を守り継ぐ-1
この地方特有の粗くざっくりとした土から生まれる素朴で温かみあふれる陶器として、日本全国にファンの多い唐津焼。唐津市内から車で15分ほどの里山の一角にある「隆太窯」は、日本の伝統工芸品にも指定されている、唐津焼を代表する窯元のひとつだ。
息子と父の肩が並ぶ「唐津焼」の作陶場
広い敷地内には小川が流れ、小鳥がさえずる。作陶をする工房の前には「ご自由にお入りください」の看板が掲げられ、美しい焼き物が形を成していく一部始終を、誰もが間近に見学することができる。
「庭もあるので、休日にご家族で訪れ、お子さんが遊んでいる姿を目にすることもありますよ」と教えてくれたのは、3代目の中里健太さん。
「隆太窯」は、人間国宝・十二代中里太郎右衛門(なかざとたろうえもん)氏の五男として生まれた健太さんの祖父・中里隆さんが1970年代に開いた窯元で、現在は息子の太亀(たき)さんと孫の健太さんも加わり、3世代で窯を守っている。
「器を手がけてみたい」と決意したきっかけ
健太さんが祖父や父と同じく陶芸家になろうと思ったのは、服飾の専門学生だった頃のこと。「洋服のデザイナーになりたいと思い、高校卒業後は東京の専門学校に進みました。でも、もともと食べることやお酒を呑むことが大好きだったこともあり『僕も誰かの食卓を彩るような器を手がけてみたいな』と思うようになったんです」。
当初はその申し出に反対していた父だったが、最後には折れて息子を弟子にとった。それから3年が過ぎた2018年、健太さんは晴れて卒業。以来、親子3世代で窯を守っている。
隆太窯
佐賀県唐津市見借4333-1
TEL:0955-74-3503
http://ryutagama.com/
撮影:yOU
取材&文:小嶋美樹