雄大なジオを眺める圧倒的フェリー体験~離島で感じる「地球の鼓動」vol.1
多くの秘境が観光地化される中で、今なお秘境と呼ぶにふさわしい場所がある。鹿児島県にある竹島、硫黄島、黒島からなる三島村(みしまむら)だ。1989年、C・W・ニコル、立松和平、椎名誠らによって選定された「日本の秘境100選」。その一つに選ばれた三島村は、30年以上の時を経て、いまだ”シークレットプレイス”であり続ける。
フェリーはまるで「3時間のセレモニー」
「遠いのでは?」、そう思うかもしれない。しかし、もっとも近い竹島までなら鹿児島本港からフェリーでわずか約3時間、一番遠い黒島でさえ約6時間で行くことができる。眺望も圧巻だ。
鹿児島本港の目の前には、桜島が威風堂々と屹立し、出港すると左右に薩摩半島と大隅半島が広がる。この航路は、桜島を含む「姶良(あいら)カルデラ」、開聞岳(かいもんだけ)を含む「阿多(あた)カルデラ」を望みながら南下する。そして、「鬼界カルデラ」の一部である竹島と硫黄島に停泊し、最終目的地の黒島へと向かう。「フェリーみしま」は、出発から終点まで、壮大なジオが楽しめる遊覧船のような面白さが詰まっているのだ。
「フェリーみしま」は週4便。二等席なら片道3660円で乗船可能。鹿児島本港、フェリーみしま旅客待合所の近くに現れるパン屋さんは、乗船客のお目当てだ。購入したパンをほおばりながら、雄大な鹿児島湾(錦江湾)をデッキから眺めてほしい。
各島へ停泊すると、島民が繰り広げる景色が待っている。届いた貨物を受け取るため、港には多くの島民が集結し、島の暮らしが展開される。船が来る――。それは、“ハレ”の場であり、まるで一大セレモニーのような光景でもある。
ジオと島民が織りなすデッキからの光景
前方ではコンテナが吊り上げられ、中ほどのタラップからは人が下船し、船尾からはデイサービスを含むさまざまな車両が上陸していく。接岸・離岸の作業を手伝うのは、その島に暮らす島民たちだ。硫黄島では、打楽器ジャンベとダンスが盛大に出迎える。人口が400人に満たない三島村。だが、そのエネルギーは果てしない。気が付くと、手を振っている自分がいる。これほど贅沢な船旅を、私は知らない。
撮影:久保田光一
取材&文:我妻弘崇
編集:高田真莉絵