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椿がつなぐ世代を超えた硫黄島の“想い”~離島で感じる「地球の鼓動」vol.7

椿がつなぐ世代を超えた硫黄島の“想い”~離島で感じる「地球の鼓動」vol.7

TRAVEL 2023.08 鹿児島特集

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硫黄島には、「カメリアロード」という道がある。その名の通り、冬になると一面、赤い椿の花が咲き、目にも鮮やかな光景が広がる。

硫黄島は、活火山の影響で栽培できる作物が限られる。椿は、火山ガスに強く、つるつるした葉っぱに火山灰が付きにくいため、古くから硫黄島の産業を支えてきた貴重な資源だそうだ。

「三島村硫黄島の椿油は、江戸時代後期に薩摩藩が領地を紹介した書『三国名勝図会』にも紹介された由緒ある特産品です」

と教えるのは、島で搾油体験などワークショップを展開する棚次紫寿代(たなつぐしずよ)さん。硫黄島は、自然や文化に魅せられて移住する人が少なくないが、2018年に移住した棚次さんも、その一人だ。

「最初は、自生していたものを活用していたといいます。その後、1980年代頃から島外でも販売するために、植林をして栽培範囲を広げていきました。島には、椿の農家さんが10世帯ほどいて、合わせて10ヘクタールほど椿農園があります」(棚次さん)

椿畑に足を踏み入れると、その手入れの美しさに驚く。「雑草、琉球竹の侵入を防ぐため、こまめに草刈りをしています」と棚次さんが言うように、緑のじゅうたんのような苔の姿もあいまって、“椿の庭園”と形容したくなるたたずまいがある。

椿は、冬から春にかけて美しい紅色の花を咲かせると、春先には小さな緑色の実を生む。その後、梅雨と夏の日差しによって完熟すると、自然に実が落ちる。椿の一年には、役割があるのだ。

大きいものも小さいものも等しく大事に扱う

97歳の現在も、椿畑の手入れを欠かさないという徳田セツ子さんは、硫黄島の椿の歴史を知る証人だ。

「「ちっちゃも銭(ぜに)じゃち」と言って、どんなに小さな椿の実でもお金になると言われて育ちました。私たちにとって、椿の実はご褒美よ。ただ、大きい実もあれば小さい実もあるでしょ。地面に落ちた小さい実を見つけるためには、丁寧に掃除をしなきゃいけないの。大きいものも小さいものも等しく大事に扱う、そうやって私は椿と接してきました」(セツ子さん)

大きいものも小さいものも等しく接するためには丁寧な仕事が欠かせない――。人間関係や仕事にも通ずる金言だろう。「立ったままだと掃除できないから。地面に座って、雑草を刈るのよ」と笑うセツ子さんの姿が、椿畑の賢人のように思えてくるのは、気のせいだろうか。

「私が小さい頃は、椿の油で揚げ物をしたり、髪に塗ったりしていましたよ。島に油屋さんがあった頃は、拾った実を搾油して自分たちで使っていたんだけど、なくなってしまってね。島の外で油を作るようになってからは、実を収穫するだけだったけど、彼女(棚次さん)が来てくれたことによって、また自分たちで油を作る生活が広がってくれるかもしれない。大した人だよ、彼女は」(セツ子さん)

その言葉を隣で聞いていた棚次さんは、「いやいや」と謙遜しつつも、「せちばぁの思いを大事にしながら、硫黄島の椿文化を広げていきたい」と決意をあらたにする。

椿の島で、自分だけの椿油を作る

棚次さんに相談すれば、島内で搾油体験をすることも可能だ。

「まず、実から種を取り出して、種を覆っている殻を取ります。次に、その種をすり鉢で細かく潰してペースト状にしていきます。細かくしないと、上手に搾油できないんですね。そして、ペースト状にした種をガーゼに包んで12分ほど蒸します。蒸しあがったら、最後にギュッと絞ります」(棚次さん)

すると、黄金色に輝く椿油がしたたり落ちてくる。港近くのお土産店で製品化された椿油やせっけんを買うこともできるが、自家製の椿油ともなれば感慨もひとしおだ。なにより、搾油のプロセスをたどることで、先人の知恵を自分の頭と体の中に染み込ませていくような感覚になる。光り輝く椿油は、硫黄島の歴史の一部。その歴史に、ほんの少し触れられる特別な体験だろう。

「同じ作業をしていても、人生観って人それぞれ違うと思うんですね。椿にも言えることで、せちばぁの人生観を直で聞けるのは本当にぜいたくなことだと思っています。硫黄島で受け継がれてきた椿の文化を、たくさんの人に知っていただけたら」(棚次さん)

セツ子さんは言う。

「畑をきれいにしておけば、次の世代の人たちが椿に対して良い印象を抱いてくれるでしょう?きれいにしていなかったら誰もやりたがらない。少しでも椿に良い印象を抱く人が増えたら、私は幸せですよ」(セツ子さん)

硫黄島には、世代を超えた“想い”がつながっている。

椿の搾油体験

問い合わせ
TEL:070-1076-2607
料金:一人1500円
https://www.instagram.com/ioujima_camellia/

撮影:久保田光一
取材&文:我妻弘崇

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