萩の夏みかんと福沢諭吉とマーマレード〜夏みかん物語3
山口県の北部に位置する萩といえば、吉田松陰、高杉晋作、そして伊藤博文に代表される長州ファイブなど、幕末から明治維新、さらには明治期にかけて活躍した偉人のイメージが強い。明治維新からほどなく、萩では日本で初めて夏みかんの経済栽培をスタート。今でも萩のまちを歩けば、いたるところに夏みかんがたわわに実り、5月上旬には白い花を咲かせて、萩のまち全体が甘く爽やかな香りに包まれる。萩は夏みかんのまちなのだ。
福沢諭吉へのオマージュから生まれたマーマレード「萩マルマレット」
洋食好きで、日本に初めてカレーを紹介したとして知られる福沢諭吉。『福澤諭吉傳第一巻』(岩波書店)には、大阪の適塾の同窓だった萩の松岡勇記に宛てた礼状に、到来の夏みかんの皮でマルマレット(マーマレード)を作ったという記述がある。
「萩博物館でその手紙の存在を知り、福沢諭吉が萩の夏みかんでマーマレードを作っていたことはうれしい驚きでした。日付は明治26年7月2日。もしかしたら日本で最初のマーマレードかもしれない。そう思っただけでワクワクしました。”マルマレット”という響きも素敵で、それを名前にいただいて13年前から販売しています」
と語るのは、萩城下町でギャラリー&ティールーム「俥宿 天十平」を営む中原万里さん。
江戸時代の旧家に増築された大正時代の洋館で、紅茶と焼きたてのスコーンに自家製マーマレード「萩マルマレット」を添えて提供、瓶詰めも販売している。
「夏みかんと砂糖だけで作るところは諭吉さんと一緒ですが、砂糖は皮と同じくらい『思切て沢山に用い』というのは踏襲せず、甘さは控えめにしています」
「さらりとしたコンフィチュールに近い仕上がりですが、特別なものではなく、あくまで素人が作る普通の家庭の味。無農薬で栽培している農家さんから夏みかんを分けていただき、毎年3月から8月まで作りますが、手作業なので、ワンシーズンで500~600瓶が精一杯です」
自然の恵みを手作りするからこそ、その時々で味や食感が微妙に違うのも楽しい。
俥宿 天十平
萩市南古萩町33-5
TEL 0838-26-6474
「萩マルマレット」プレーン¥600、てんさい糖¥650、シナモン¥650。ティールームでは焼きたてスコーン(2個)¥600を「萩マルマレット」と生クリームで。
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【記事本文】山口県の北部に位置する萩といえば、吉田松陰、高杉晋作、そして伊藤博文に代表される長州ファイブなど、幕末から明治維新、さらには明治期にかけて活躍した偉人のイメージが強い。明治維新からほどなく、萩では日本で初めて夏みかんの経済栽培をスタート。今でも萩のまちを歩けば、いたるところに夏みかんがたわわに実り、5月上旬には白い花を咲かせて、萩のまち全体が甘く爽やかな香りに包まれる。萩は夏みかんのまちなのだ。