メインコンテンツにスキップ
京都祇園で見つけた最中「あんぽーね」 あんことチーズの絶妙な出会い

京都祇園で見つけた最中「あんぽーね」 あんことチーズの絶妙な出会い

LIFE STYLE 花、旅、人

share

私はおいしいものに目がありません。そして、このうえなくおいしいものを口にしたとき、心のなかでつぶやくのです。「やられた!」と。 

数年前。私は京都・祇園の和菓子店「あのん」で、少し変わった最中(もなか)をいただきました。 皮と粒あんが別々に供されます。あんとは別に、マスカルポーネチーズから作ったクリームも。あんとクリームを、客が自ら皮に詰めていただくスタイル。店主曰(いわ)く「最中の皮の香ばしさ、パリッと食感を保つため」とのことでした。 

昨今、定番の味がさまざまに変化しています。たとえば、たこ焼き。最近はソースではなく、胡椒(こしょう)やポン酢でいただくものも登場。どれもおいしいです。ですが、私は食に関しては“王道派”で「やっぱりソース」と思うのです。祇園でその最中に出合ったときも、最初は懐疑的でした。「マスカルポーネ? ティラミス食べたらええんちゃう?」と。しかも、私は大雑把なところもあって、あんとクリームを満遍(まんべん)なく綺麗に詰めることができません。少し残念に思いながら、私はまばらに中身が詰まった最中を口に運びました。 

果たして……これが、おいしいんです。一口目はマスカルポーネを強く感じ、あとから小豆(あずき)の甘みが。二口目は逆で、粒あんの柔らかな甘みが前面に……。「お!」「ん⁉」「あ!」と一つの最中をいただきながら、次々と“おいしい”が変化するんです。 聞けばこのお店、元来は長い歴史を誇るあんこの専門店だとか。長年、小豆を炊き続けてきた店が奇を衒(てら)うのではなく、王道を歩みつつ進化した姿、それがこの最中「あんぽーね」でした。食後、私はやっぱりこうつぶやきました。また、やられた……。 

今月の花は芍薬(しゃくやく)。「和芍薬」と「西洋芍薬」を取り交ぜた装花を贈らせていただきます。

赤井 勝(あかい まさる)

65年、大阪府生まれ。花を通じ心を伝える自らを「花人」と称し、自身の飾る花を「装花」と呼ぶ。08年、北海道洞爺湖サミット会場を花で飾り、13年、伊勢神宮式年遷宮では献花を奉納。昨年、 大阪府堺市に「Akai Masaru ArtMuseum 」をオープン。

編集 仲本剛