奈良「和紅茶」ロウリュに包まれ、里山を望む〜Deportare Trip vol.8
サウナの聖地「サウナしきじ」(静岡県)の娘である笹野美紀恵が、数々のサウナや温浴施設をプロデュースしてきた経験と、女性の視点で選りすぐりのスポットを紹介します。
「Deportare Trip〜旅で潤う」連載第8回目で訪れたのは、奈良県の奥大和地方に位置する山添村で1日3組限定の宿を営む「ume, yamazoe」。大阪からも、名古屋からも1時間半ほどの距離にありながら自然と一体になれる場所。
里山を望む小高い集落の頂上に立つ古民家宿に併設された「ume, sauna」は、日本ではまだ数少ないアウトドアフィンランド式サウナです。
薪(まき)ストーブで温められたサウナ室の温度は熱すぎず、山添村で採れた「和紅茶」のロウリュの蒸気に包まれます。信楽焼(しがらきやき)の水風呂は、その日の外気がそのまま反映されるという水温がほどよく、サウナ室の屋根の上に設けられた外気浴スペースからの眺めは絶景!時間によっても全く印象が変わります。
「自然の力を借りながら、人の感覚が優しくなるようなサウナを目指しています。時計や温度計を置かないのも、人間の肌の感覚をどれだけ研ぎ澄まさせることができるかということを大事にしているから。季節や天候によっても感じるものや見えるものが全く違うんですよ」
と、オーナーの梅守志歩さん。山添村に一番引かれたのは、満天の星だったと言います。のどかな村の、空に一番近いサウナは、人に優しいところです。
案内人:笹野美紀恵
温浴施設などの事業コンサルタント会社「ONEBLOW」代表。元ミスインターナショナファイナリスト。心と身体をリトリートするサウナの新しい入り方を伝える「SAUNAGE(サウナージ)」として活動中。
ume, yamazoe
tel. 0743-89-1875
奈良県山辺郡山添村片平452
近鉄奈良駅、JR奈良駅・奈良公園から45分
大阪駅から車で1時間
京都駅、名古屋駅から車で1時間半
名阪国道「山添IC」から車で10分
2020年3月オープン。緑が美しい茶畑が広がる奥大和地方の一角にある山添村で、オーナーの梅守さんいわく、「7軒ほどしかない小さな集落」にひっそりと佇む一軒宿。築100年以上の古民家を改装してできたお部屋は3室のみ。1室2名から最大8名まで宿泊できる。
宿を経営した経験もなく、大阪のど真ん中で暮らしていたという梅守さん。実家の寿司製造・販売会社「梅守本店」(奈良市)がわさび葉を使った寿司を作っていたのが縁で、わさび葉の生産地であり、知人のいる山添村に住み始めた。
「アラスカを撮り続けたことで知られる写真家の星野道夫さんの本が大好きで、昔から大自然のなかで生活したいと思っていたんです。山添村は星の観測所があることでも知られていますが、夜になると、本当にものすごい量の星が見える。それが山添村に引かれた一番の理由です。自分たちが普段見ようとしていないというか、見えてないものがここには確実にあると気づかされたんです」(梅守志歩さん)
地のものを食すという「身土不二」の考えに基づき、地元で採れた旬の野菜を中心した和食を提供。5月は、集落で採れるタケノコやフキノトウなどの山菜を使ったお料理がいただける。「朝食は近所のおばちゃんが調理を担当してくれています。サウナの裏にフキノトウが群生しているので、春はおばちゃんお手製のフキ味噌を楽しみにしてください」(梅守さん)
山添村の「和紅茶」や庭で採れたハーブを使ったロウリュを楽しめるフィンランド式サウナは、「サウナシュラン2020」で第10位を受賞。プライベートサウナと地の野菜でバーベキューができる日帰りプランも人気。
クレジット
取材・文/笹野美紀恵 編集/服部広子
写真/西岡潔、笹野美紀恵