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熊本「南阿蘇」の異世界で、自分を見つめ直す~Deportare Trip vol.8

熊本「南阿蘇」の異世界で、自分を見つめ直す~Deportare Trip vol.8

LIFE STYLE DEPORTARE

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熊本・南阿蘇の異世界に誘われ、自分を見つめ直す瞑想を

本殿へと続く参道の両側には、苔(こけ)むした97基の石灯籠(いしどうろう)が並び、杉の大木の間から差し込む陽光が異世界へといざなう。

阿蘇くまもと空港から車で1時間ほどの南阿蘇に鎮座する上色見熊野座神社(かみしきみくまのざじんじゃ)。今回、こちらの神社を訪ねたのは、プロバスケットボール選手で、Bリーグ選手会会長を務める田渡凌選手(熊本ヴォルターズ)が今、一番気に入っている熊本の名所に行こうと誘ってくれたからだ。

「熊本に引っ越して2日後にここに来たんです。神秘的な雰囲気に引かれたのかな。熊本に住んでから、自然に触れることが好きになりました」(田渡選手)

 本殿を抜けたところに現れる、岩山に縦横10メートルもの大穴が空いた『穿戸岩(うげといわ)』で手を合わせるのも恒例だという。

「合格・必勝のご利益があるとは知りませんでした。たぶん、今の僕に必要だから無意識に足が向いたのでしょう。普段は、ヨガを習慣的に取り入れ、自分を見つめ直す時間を作るように心がけていますが、静寂な神社で過ごす時間もある種、瞑想と同じなのかもしれません」

瞑想は、集中力を高め、パフォーマンスを上げる効果が期待できる。田渡選手の今シーズンの活躍の裏に、阿蘇の神社あり!?

田渡選手が語る熊本の魅力、ヨガ習慣

昨年7月、熊本ヴォルターズに移籍。9月には、日本バスケットボール選手会の4代目会長に就任した田渡凌選手。今回、案内してくれた上色見熊野座神社(かみしきみくまのざじんじゃ)は、いつも突然、「今日はあそこに行こう!」と思いついたときに足を運ぶ。「自分は、そういう直感を信じて生きているんですよ。自分のなかで勝手に『そこに行く運命なのかな。呼ばれているような気がするな』と思ったら行動に移します」と語る田渡選手に、熊本でお気に入りの場所や日々の生活で大切にしていること、そしてBリーグの選手会長としての抱負を聞いた。

熊本は新旧の融合が美しい街

「熊本はまず、食べものが美味しい。建物も、古いものと新しいものをいい具合に融合した建造物が多くて、とても美しいんですよ。なかでも、市内にあるカフェ『珈琲回廊』やレストラン『テラス TERRACE』はとても気に入っています」

『珈琲回廊』は、熊本城の城下町だった場所に明治8年に建てられた建物を改築した珈琲豆の専門店。店名は“コーヒー豆のギャラリー”という意味を持つそうで、常時25種類ほどの豆を取り扱っている。日本の町家の面影を残す心地のいい空間が体験できると、地元の人はもちろん、観光客にも人気のカフェだ。

「実は僕、コーヒーが飲めないんですよ。だから、いつも牛乳を飲んでいます(笑)。とにかく、居心地がよくて店内の雰囲気がとても落ち着くので、考えごとをしたいときとか、一人でよく行きますね。また、『テラス』は古い洋館をリノベーションした一軒家のレストランで、シュラスコやタコスが食べられます」

そして、熊本のいいところは、何よりも人情に厚い人々。

「熊本に住んでから、以前よりも人との出会いを大切にするようになりました。

人は温かいし、とにかく熱くて、すぐに仲良くなれる。頑張れ!って応援もしてくれるけれど、ダメなときはちゃんと叱ってくれるような人が多いですね」

日常にヨガを取り入れ、疲労回復と瞑想

「ヨガを始めたのは、大学でアメリカに行ってからです。当時はたまにジムでやる程度だったんですが、帰国後も続けました。今では、完全に僕のライフスタイルに入っています。所属する熊本ヴォルターズでは、アクティブレストという形でヨガを取り入れています」

アクティブレストとは、その名のとおり、「積極的休養」と呼ばれる疲労回復法。疲労時に軽く体を動かすことで血流の改善を図り、疲労物質の排出を促す。もともとはスポーツの世界で使われていた疲労回復法だが、運動不足の人などは日常生活に取り入れると、疲れにくくなるという。

「ヨガはストレッチ効果もありますし、筋肉の疲労回復法としてもスポーツ選手と相性がいいと思います。自分は、個人でもヨガ教室に通っているので週2~3回はやっています」

また、精神的にもヨガの時間は必要だと感じている。

「ヨガは、自分自身を見つめ直すためにとても貴重な時間です。トレーニングをして、食事をして、という日常の流れのなかでは、なかなか一人になって落ち着く時間がないというのが実情。それがヨガをやっている時間は瞑想と同じで、本当に何も考えないというか、極力、無に近い状態を心がけます。たかだか1時間のことですが、携帯電話から離れるということも大事にしています」

選手会長としての決意とBリーグのこれから

日本バスケットボール選手会の会長に就任して5月で8ヶ月。「大変だと思ったことは1ミリもない」と田渡選手。会長になって初めて見えてきた問題点や改善点を、選手会に問題提起し、一つ一つ変えていっている状況だという。

「誰でも会長になれるわけではないですから、自分にやらせていただけるということはとても光栄で、ワクワクしながらやっています。僕らは、法人、個人からなる賛助会員の方々の応援が不可欠。ですが、僕自身、会長になるまで賛助会員の存在自体知らなかったくらい、選手たちにその意識が低かった。そして、会員数も減少してしまった。そこで、まずは現賛助会員の方たちに満足してもらえるようなことを始めていこうと思っています」

オフの期間、子供たちにバスケを教えたり、被災地に行ったりという活動をしてきたが、シーズン中でもできる活動をしなければならないと考えている。

「これまでのチャリティー活動などは、選手たちに一般公募で参加してもらっていました。これをオーガナイズする方向で進めて、シーズン中も選手とファンが交流できるような仕組みを作りたいと思っています。また、3年後の2026年にバスケットボール男子のトップリーグ『新B1』が発足するので、選手として新リーグに対する思いをまとめていくことも重要だと思っています」

最後に熊本ヴォルターズ、そしてバスケットボールのファンに向けての意気込みを聞いた。

「まず、会場に足を運んでいただけるような存在でありたい。そのためには自分たちも頑張らなきゃいけないと思っています。子供がバスケをやってるからとか、観戦に来る動機はなんでもいい。会場で選手たちの生のプレイを見ていただければ、きっと何か得られるものがあると思います。元気でも、勇気でも、感動でも、感じたままに受け取ってもらいたいし、僕らはそれを感じてもらえるような場所であり続ける。それが自分の目指すものです」

竹下雄真

1979年、神奈川県茅ヶ崎市出身。会員制パーソナルトレーニングジム「デポルターレクラブ」代表。トップアスリートをはじめ多くの著名人の肉体改造に携わり、ウェルネス以上、メディカル未満の領域で、クライアントの進化に日々努める。著書に『ビジネスアスリートが実践する最強のリカバリー術』(光文社)ほか多数。

田渡 凌

東京都出身。29歳。ドミニカン大学カリフォルニア校卒業。昨年7月、熊本ヴォルターズに移籍。ポイントガードを担当。

上色見熊野座神社(かみしきみくまのざじんじゃ)

熊本県阿蘇軍高森町上色見2619
阿蘇くまもと空港から車で50分

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珈琲回廊

tel:096-325-1533
熊本県熊本市中央区西唐人町20
熊本市電「呉服町駅」から徒歩4分
阿蘇くまもと空港から車で45分
https://www.coffeegallery.online

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テラス TERRACE

熊本県熊本市中央区水道町3-38
阿蘇くまもと空港より車で40分
熊本市電「水道町駅」より徒歩4分
https://www.instagram.com/terrace_kumamoto/

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撮影:平山潤一 取材・文:竹下雄真 編集:服部広子