ANAで巡る日本一周 空の旅で大切な人に“献杯”を

夏休みの天気が全国的に晴れ予報で仕事も一段落、それなら「世界一周」はさすがに無理でも、「日本 一周」くらいなら、思い立ったらANAのネットワークで難なく1日で可能である。
沖縄から北海道まで、たっぷり1日かけてゆっくり空の旅を楽しむ贅沢。時にはそんなゆとりが必要だ。ゆっくりとは言っても、機内、空港内でのんびり過ごすのであって、間違っても空港からバスやレンタカーで観光地へと繰り出したりはしない。純粋に飛行機に乗り続け、空だけの旅を楽しみ尽くすのが正解。
「飛行機に乗っているだけで、グルメも観光もしなくて、なにがそんなに楽しいの?」と、周囲からも、身内からも問われ続けてきたのだが、これは 一度経験してみないとまったく理解してもらえない行為なので、返答はいつもテキトーにはぐらかしている。マイルや上級会員ステイタス維持のために搭乗していたことも過去にはあったものの、その辺りのことは最早どうでもいいと思えるほど搭乗回数を重ね続けると、空だけの旅という行為が如何(いか)に自分にとって必要不可欠、食事、睡眠などと同列のことであると実感するに至る。地上でじっとしているより仕事のアイデアはポンポン湧き出るし、読書をしていても内容が頭にサーッと吸い込まれていく。そして、この『翼の王国』の原稿も連載当初から執筆しているのはANAの機内だ。 自身にとっては神事でもある。
ひと足先に天国へ旅立ってしまった友人や肉親に、高度1万3千メートル上空を航行中、少しばかり寄り添えた気分になるのも、機内である。ちょっと離れたお墓にお参りに行くより故人の魂に近づけた気分になるものだ。

以前、テレビのワイドショーやバラエティ番組に引っ張りだこだった、ぽっちゃり体形で舌ったらず、マシンガントークが売りの流通ジャーナリストの金子哲雄さん。私に会うたびに、「地方での講演会などへの移動はANAばっかりなんですよ〜」とよく話されていた。SNS上でコメントを返してくださったのがきっかけで、直後に奥様と 一 緒に私の餃子を食べに来られてから楽しいお付き合いを続けさせていただいた。
二人でANAブルーハンガーツアーに申し込んだこともあった。格納庫で、間近に飛行機を見て「今度この最新型787のビジネスクラスで、ニューヨークへご一緒しましょう!」と約束した。病気のことなど知る由(よし)もない私は「過激なダイエットは体に毒ですよ!」などと平気で言い放っていた。病気のことを聞かされてから、ご自宅へお見舞いがてら、餃子を作りに行くと、「これが787のフルフラットシートだったら最高に楽しいんだけどなぁ〜」とベッドの上でつぶやいていた。 お盆期間中、機内でドリンクサービスが始まるタイミングで、窓から上を眺めながら故人に「献杯」することにしている。
〜つづく
イラストレーション/ソリマチアキラ
パラダイス 山元 | ぱらだいす やまもと
プロ搭乗客。 ANA ミリオンマイラー。音楽家。餃子レストラン「荻窪餃子 蔓餃苑」オーナーシェフ。著書に『読む餃子』、英語版・フランス語版餃子レシピ本『GYOZA』、『パラダイス山元の飛行機の乗り方』『なぜデキる男とモテる女は飛行機に乗るのか?』などがある。全国各地で開催中の「皮からつくる本気の餃子づくり教室」などの出演イベントの詳細は X(旧Twitter) で発信中。
X @mambon

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