てるてる坊主の由来? 茨城・日和坊を訪ねる晴れ待ちの旅
茨城の山奥に現れるという日和坊は、てるてる坊主の原型ともいわれる晴れの妖怪。竜神峡の岩肌、月待の滝の光、常陸牛の食卓をめぐるうち、天気を祈る旅はいつしか「平穏無事」を願う心の旅へ変わっていく。
数千もの伝承の中から、都道府県ごとに一匹の妖怪を選び、造形作家森井ユカの独自の解釈で創造しました。妖怪に誘われるがまま旅すると、美味しいもの、きれいな景色に必ず出会える!? ようこそ、空飛ぶ百鬼夜行へ。
茨城県・日和坊(ひよりぼう)
ご利益 平穏無事
てるてる坊主の原型ともいわれる坊。天気の妖怪と水の名所へ
昔々の常陸国。山奥の岩肌に日和坊という坊主の姿が浮かぶと、雨がやみ晴れとなる。てるてる坊主を吊るして晴れを祈るのは、この日和坊が起源ともいわれている。
晴れの神が現れる山は海底と太陽が出会う場所
晴れの日に常陸国(ひたちのくに)の山奥にある岸壁に現れる、てるてる坊主の原型ともいわれている天気の妖怪・日和坊(ひよりぼう)。この妖怪さんぽでも幾度となく紹介してきた江戸時代の妖怪画の大家、鳥山石燕(とりやませきえん)の筆によるもので、その後を水木しげるが描き繋いできた。現在の茨城県に出現するとはいえ場所は定かではないため、当たりをつけて出発する。鳥山石燕は正面を向いた坊主を描いたが、筆者はよりてるてる坊主に近いフォルムの姿で造形した。


【左】竜神ダム横の岩肌。
【右】迫力の「竜神大吊橋」は、歩行者専用橋として日本最大級の長さ。橋からのバンジージャンプは世界でも数少ない100m級。
日和坊と共にまず旅したのは、水戸から北へ約1時間、竜神峡の絶景とバンジージャンプで人気の竜神大吊橋……から見える竜神ダムの岩肌。といっても生の岩肌ではなく、保護のためコンクリートで吹き付けをしている。この竜神峡には岩肌がよく見られるが、その調査からこの辺りは数億年の遠い昔に海底であったことが知られており、足が震えるほどの悠久のロマンを感じる。
竜神大吊橋
https://ohtsuribashi.ryujinkyo.jp/
調べてみると茨城には雨や水に関する名所が非常に多く、なかでもその名前に惹かれたのが竜神大吊橋から30分ほどの「月待の滝」。
なんと滝の裏側に簡単に回り込める。この滝は蕎麦処「月待の滝 もみじ苑」の私有地であり、食事の後先に誰でも滝の裏側に入ることができる。陽にキラキラと光る裏見の滝を飽きもせず見ていると、日和坊に褒美でももらったような気分になる。



月待の滝 もみじ苑
常陸牛を心底堪能しフラミンゴと過ごす一日

日和坊を訪ねた山間部から、まっすぐ水戸を目指して食べにきたのはもちろん常陸牛(ひたちぎゅう)。常陸牛は日本が誇る高品質の黒毛和牛で、それを素晴らしいインテリアの寛げる店内でいただけるのが「和牛庵」。看板メニューである熟成和牛のひつまぶしは、そのまま、薬味と、出汁(だし)をかけてと、うなぎのひつまぶしさながらに、じっくりゆったりと味わえる。
和牛庵
そしてここから程近い場所にある「タヴェルナハンバーグ」ではカジュアルに、仲間同士や家族で常陸牛のハンバーグが楽しめる。
肉と一緒に運ばれる焼き石で好みの具合に仕上げるスタイルは、店の中にいるのに開放的な感覚があり、気分は最高潮に盛り上がる。

タヴェルナハンバーグ
さらに水戸の不思議かわいいレストランといえば、知る人ぞ知る「メヒコ(水戸フラミンゴ館)」。

フラミンゴたちとガラス一枚隔てた場所で食事ができる珍しいスタイルだ。これは創業者が遠洋漁業のメキシコ滞在でフラミンゴの群れを見て感動し、1970年にレストランをオープンする際にそのままイメージを投入したという、極めてシンプルで情熱のある成り立ちだ。
とはいえ老舗洋食店としても地元客に評判がよく、人気のシーフードがどのテーブルにも所狭しと並べられている。陽が差し込む水辺で餌をすくうフラミンゴを眺めながら、どうか明日も晴れるようにと日和坊に願わずにはいられない。

(メヒコ/水戸フラミンゴ館)

シーフードレストラン メヒコ 水戸フラミンゴ館
参考
『ふるさとの妖怪考:万物に魂あり。万物に怪あり。』水木しげる(じゃこめてい出版)
『今昔画図続百鬼』鳥山石燕
「ニッポン47妖怪さんぽ」が2025年度グッドデザイン賞を受賞いたしました

取材・文・造形 森井ユカ
立体造形家/キャラクターデザイナー ポケモンカードゲームのイラストレーション、「コネコカップ」「ネゴ」のデザイン、粘土遊びセット『ねんDo!』のディレクションなど。著書多数。
撮影 原ヒデトシ
編集 中野桜子
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