アオリイカの目がまだ青いうちに…水揚げから8時間 能登の鮮魚が東京の店頭に並ぶ
鮮魚たちもギョッとするANA “TEAM スピード輸送”の連携プレー
「お客さん、お客さん。今日は石川県の能登から魚が入ってるよ。しかも“今朝獲れたばかりの魚”ときたもんだ。能登の魚はウマいよ!」
威勢のいい店長の声が鳴り響く――10月3日、朝7時に能登の宇出津港。9月にできた新しい競り場に続々と集まるイカ、鯛、鰈、メバル、ハタ、のどぐろ……など数十種類。あっという間に競り落とされ、梱包され、空港に届けられ、同じ羽田便の飛行機に乗り、気が付いたら東京の私の通いつけの魚屋さんにピチピチと並ぶ。このスピード感!
ANAは航空会社だからスピード輸送で貢献できる。でも、そんなに簡単な話ではない。
例えば、空港に運ばれた鮮魚は保安検査のために1箱ずつチェックして、さらに厳重な水漏れ対策をしなければならない(液体が漏れ出すと航空機器などに影響を与えるため)。この日の箱は計39ケース。
出航まであと1時間。それを秒刻みで処理する空港のカーゴスタッフの見事な動き。もちろん日頃の業務で鍛えられているのだろうが、慣れない鮮魚。不安があったはず。その現場に漂っていたのは、「できる」という自信よりも、「やらなければならない」という気概。それがこの取り組みを輸送という作業以上の社会的ミッションに昇華させている。
「70になってもこんな仕事しとる」と笑いながら語っていた能登の港の下平さんをはじめ、さまざまな世代のメンバーが、能登を元気にするために結束して動いていた。
「うちらよりも、輪島や珠洲のほうは被害も半端じゃない。支援は当事者のことを考えて、長く続けてほしいね」(下平さん)。
この日の取り組みは毎月開催されることになり、TEAMの能登支援も、より一層の広がりを見せてゆくことになった。
取材を終え、朝からずっと一緒だったアオリイカを夕方に食す。とろみがあるのにスッと噛み切りやすくて美味……最高!

7:00 宇出津港に水揚げされた魚が競りにかけられ、買参権を持つ産地市場の仲買人が競り落とす。
産地市場の仲買人 したひら鮮魚店・下平勝則さん
「地震から2年、豪雨から1年。やっと魚が戻ってきた。定置網の時期、冬の能登の魚の美味しさは、ぜひ日本全国の人たちに知ってほしいね」
8:00 仲買人と仲卸業者で発送する魚をセレクトし、のと里山空港まで運ぶ。

水産卸売業 ウロコ水産・高崎寛史さん
「トラック輸送だと東京に着くのは翌々日になっちゃう。飛行機でその日のうちになんて、最初は〈無茶やろ〉と思ったけど、なんとかなったね(笑)!」
9:00 搬入された発泡スチロール箱をANA Cargoのスタッフがコンテナに厳重に収める。そして機内へ。
ANA Cargo・矢部貴之さん
「宇出津港で威勢のいい競りの様子を目の当たりにして胸が熱くなりました。復興はまだ道半ば。観光で人が戻るのには時間がかかるけど、〈エアラインのスピード物流ならもっと役に立てることがある〉と確信しました」
10:40 のと里山空港発 NH748便



11:45 羽田空港着
ANA 客室センター・古仲亜沙美さん
「コロナ禍で石川県庁に出向していた時に〈能登はやさしや土までも〉と言われるこの地の温もりに心が満たされ、少しでも恩返しができればと思って参加しました。能登ならではの魚の話題でお客様との会話も弾みました」
14:30 羽田空港に到着後、すぐにそのまま小売業者のトラックに引き渡され、都内の各店舗で販売される。写真は東武百貨店池袋本店地下2階の魚力にて。


小売業者 魚力 東武百貨店池袋店・小関弘樹さん
「普段さばく魚と違ったりするから大変なんだけど、だからこそお客さんも興味を持ってくれる。そして、やっぱり鮮度! アオリイカなんて、まだ目が青いままだからね!」

“TEAMスピード輸送” OTHER MEMBERS
他にもさまざまなメンバーがこのスピード輸送の取り組みに参加。TEAM一丸となって企画、折衝、サポートしました。右から、ANAあきんど 田口剣さん、ANA Cargo 原 美保さん、ANA Cargo 戸田貴男さん、ANAあきんど 加藤俊哉さん、ANA金沢支店 花井宏樹さん。

同プロジェクトはこれを機に、2026年3月まで、毎月開催予定!
撮影 吉澤健太
取材・文 川原田朝雄