アメリカの首都だからこそ成しえる特別な体験 ワシントンD.C.への誘い

2025年1月に行われた第47代アメリカ合衆国大統領の就任式以降、連日のようにメディアに登場し、世界中から注目を集める首都ワシントンD.C.。ここは政治の中心地だが、それだけではない。米国の原点をひもとくミュージアムやモニュメント、年間を通して開催されるイベントなどがほぼフリー。芸術、科学、自然史など多岐にわたるコレクションを無料で楽しめるという、首都だからこそ成しえる特別な体験が叶う都市なのだ。2026年7月4日、米国は独立宣言調印250周年を迎える。その燦然と輝く魅力に会いにワシントンD.C.へ。
どこの州にも属さない美しき計画都市

初代大統領ジョージ・ワシントンの偉業を称える169mのオベリスク、ワシントン記念塔。展望台入場は無料、要予約。
一般的に首都はその国最大の都市であることが多いが、ワシントンD.C.の場合は異なる。その理由は米国の成り立ちと深く関わっている。1775年、イギリス本国に対し北アメリカ東部沿岸の13の植民地が起こしたアメリカ独立戦争。翌年にはアメリカは独立宣言を発し、13州による合衆国となった。これらの州が連携するためにつくられたのが、どこの州にも属さない連邦直轄のワシントンD.C.。D.C.とはコロンビア特別区(District of Columbia)の略だ。
街が築かれたのはメリーランド州とバージニア州に挟まれたポトマックの河畔。フランス生まれの建築家ピエール・シャルル・ランファンによる計画都市である。その中心はナショナル・モールという広大な公園で、巨大なリンカーン像がある西端のリンカーン記念館から東端の連邦議会議事堂まで約4kmに及ぶ。

芝生と樹々が生い茂る緑地と荘厳な国の記念建造物が点在するナショナル・モールには、米国が歩んできた歴史や 蒐 集 してきた財産が凝縮されたミュージアムが集結。多くのミュージアムは連邦政府からの資金、基金、個人からの寄付、その他の財源を組み合わせて運営。ゆえに誰もが自由に無料で至宝に親しめるようにするという首都のコミットメントが体現されている。
ワシントンD.C.を歩くと、開放的で風通しがよく空が広いと感じる。じつは建物には厳しい高さ制限があり、100mを超える超高層ビルがない。さらに市内の3分の1が緑地帯という公園都市でもある。ひとり当たりの緑地面積は全米の主要都市で1位。東京の約5倍にもあたり、この街のスケールの大きさをまざまざと感じる。

トラムに乗って日常を感じる

ショップやバー、アート作品などが点在する最新スポットにして、人々の暮らしが息づく下町でもあるHストリート内の注目エリア。

ここに2016年、54年ぶりに復活したのが路面電車のDCストリートカー。首都の玄関口であるユニオン駅から東に延びる3.5㎞を無料で往復する。20世紀前半まで住民の身近な交通手段だった路面電車の再生は地域を活気づけ、街の温度を実感させてくれる。

ETHIOPIC RESTAURANT
ワシントンD.C.はエチオピア系住民が多いことからエチオピア料理店が人気。穀物を発酵させたパン・インジェラと野菜や豆などの煮込み料理が基本。オーナーのMeseret Bekeleさんによる代々のファミリーレシピを提供するこちらは、ワシントン・ポスト紙のお墨付き。
多彩なイベントに参加する
ワシントンD.C.での一大イベントといえば、春の全米さくら祭りだが、ほかにも誰もが音楽に酔いしれるDCジャズフェスト、ホリデーシーズンのナショナルクリスマスツリーの点灯式など首都を象徴する無料イベントが多数。2026年は独立250周年を祝うイベントが目白押しだ。ジョン・F・ケネディ舞台芸術センターでは無料で鑑賞できる公演も実施されている。




ジョン・F・ケネディ舞台芸術センター
米国芸術の発信地としてコンサートやバレエ、オペラなどを開催。ミレニアム・ステージで開催される無料公演は、「誰にでも開かれた芸術公演を」という目的で若い芸術家の発表の場にも。この日は、来日公演歴もあるバンジョー演奏者Nora Brownとフィドル奏者のStephanie Colemanのデュオが登場。
取材・文 小関じゅんや
写真 yOU(河﨑夕子)
編集 小嶋美樹
協力 ワシントンD.C. 観光局
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