ベトナム中部で出合う歴史と暮らし　世界遺産ホイアンと白砂のビーチへ｜翼の王国厳選

翼の王国9月号ではベトナム・ハノイの伝統芸サーカスや街角で出合える感動グルメについて特集しました。ベトナムは、自然・歴史・文化・リゾートが調和する、多彩な表情を持つ国です。

石灰岩の奇岩が連なるハロン湾、王朝の記憶を宿すフエ王宮、文化の舞台となるハノイ・オペラハウス、灯りに彩られるホイアン旧市街、暮らしと海が寄り添うダナンやフーコック島――。各地に息づく物語に触れながら、ベトナムをいっそう深く味わう旅へ。

ハロン湾

大小1,600を超える石灰岩の奇岩が海上に浮かぶハロン湾は、悠久の自然が刻んだ壮大な景観が魅力のスポットです。伝説によれば、外敵から国を守るために天から降り立った龍が口から宝石を吐き、それが無数の島々となったと伝えられています。

青く穏やかな水面にそびえる石柱や洞窟は、時間の流れとともに形を変え、人々の想像をかき立ててきました。湾内を進むクルーズ船からは、点在する島々の間を縫うように進み、神秘的な静けさと迫力を同時に味わうことができるでしょう。

1994年にはユネスコ世界自然遺産に登録され、今もなおベトナムを代表する景勝地として世界中の旅人を惹きつけています。

フーコック島

タイ湾に浮かぶフーコック島は、白砂のビーチと熱帯の森に囲まれたベトナム最大の島です。透き通る海ではカラフルな魚が群れをなし、シュノーケリングやダイビングでその姿を間近に楽しめます。

島の北部には原生林が広がり、自然保護区として多様な生態系が守られてきました。漁村を訪ねれば、魚醤を仕込む工房や素朴な市場が残り、土地の暮らしが静かに受け継がれています。

近年はリゾート開発が進み、海辺にはヴィラやホテルが立ち並ぶようになりました。それでも夕暮れには水平線に沈む太陽が海と街を照らし、南国らしい穏やかな空気が漂います。自然と人の営みが重なり合うこの島は、旅人に心豊かな時間をもたらしてくれるでしょう。

フエ王宮

ベトナム中部に位置する古都フエには、阮朝の栄華を今に伝える王宮が残されています。

19世紀初頭、阮朝初代皇帝の嘉隆帝によって築かれたこの城郭は、中国の紫禁城を模して整えられた壮大な宮殿群で、政治と文化の中心として長く機能しました。城壁に囲まれた敷地には、玉座の間や儀式の舞台となった殿堂、繊細な装飾を施した門が点在し、往時の威厳を漂わせています。

戦禍を経て一部は失われたものの、修復が続けられ、ユネスコ世界文化遺産として再び人々を迎えています。訪れる人は、朱塗りの柱や金箔を施した装飾を目にしながら、かつて皇帝が歩いた中庭に静かに時の流れを感じることでしょう。

ホイアン旧市街

ホイアン旧市街は、歴史と彩り豊かな風景が調和する世界文化遺産の街です。

16世紀から国際貿易港として栄え、日本や中国の文化が交わるなかで独自の町並みが形成されました。昼間は古い商館や来遠橋などが往時の面影を伝え、夕暮れとともに街は幻想的な表情へと変わります。

ナイトマーケットが始まると昼とはまた違った活気が。川沿いに色鮮やかなランタンや繊細な手工芸品、布製品やアクセサリーが並び、屋台からは地元料理や甘いスイーツの香りが漂います。光と人の賑わいが織りなす夜の旧市街は、旅人の心に深く刻まれるでしょう。

ハノイ・オペラハウス

フランス統治時代の1901年に着工し、10年の歳月をかけて完成したハノイ・オペラハウスは、市街地の中心に優雅な姿を残しています。パリのオペラ座を手本にしたネオクラシック様式の外観は、白壁にクリーム色の装飾が映え、訪れる人を別世界へと誘うかのようです。内部には赤いビロードの客席とシャンデリアが輝き、音楽や演劇の舞台をいっそう華やかに彩ります。

長らくベトナムの文化発信地として愛され、歴史的瞬間の舞台ともなったこの建物は、今も人々の誇りです。ガイドツアーでは建築美や舞台裏を間近に感じられ、劇場に響く余韻とともにハノイの歩んできた歴史に触れるひとときを過ごせるでしょう。

ダナン

中部ベトナムの港町ダナンは、海と人の暮らしが寄り添う表情豊かな街です。朝のミーケービーチでは、地元の人々が体操や散歩を楽しみ、海辺に穏やかな時間が広がります。

街を歩くと、古代チャンパ王国の彫刻を集めた博物館が往時の記憶を静かに伝え、近代的な建物との対比が鮮やかです。夕刻になると、ハン川に架かるドラゴン橋が光を放ち、川辺には家族連れや若者たちが集まって賑わいを見せます。

リゾートとしての華やかさと、地元の人々が大切に守る日常とが重なり合うダナン。その姿は、旅人に「暮らしと文化が息づく街」としての魅力を感じさせてくれるでしょう。

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