ミラノのシンボル レトロな路面電車で駆け抜ける街と歴史の魅力
ミラノの町中を縫うように走る路面電車の姿。旧市街を旧型の車両が走っていく様は、町ごとタイプスリップしたかのような風景となる。ミラノの街並みと共に育まれたこの交通機関は、歴史的にも文化的にも重要な存在なのだ。ミラノ人に暮らす人にとっても、単なる交通手段にとどまらず、都市のアイデンティティの一部であり、長い歴史を持つ路面電車は市民に郷土愛を感じさせる象徴でもある。レトロな車両は地元の人々だけでなく、観光客にも愛されている。また、古い車両がいまだに運行していることは、都市の伝統を守り続ける姿勢を示しており、ミラノの文化的価値を高める要素ともなっている。
ミラノの路面電車はその長い歴史と保存状態の良さから、世界の都市交通の中でも特別な地位を占めているように思える。たとえばニューヨークやパリ、ロンドンなどの大都市は地下鉄を中心とした交通システムが発達している。もちろんミラノにも地下鉄は存在しているが、しかし今なお路面電車が主要な交通手段として機能している点が特徴的。
因みに世界で最も古い路面電車は、1832 年にアメリカのニューヨークで導入された、馬が客車を引くホースカーだといわれている。続いてパリやロンドンでも路面電車が登場。1879 年開通のミラノ路面電車はイタリア国内で最も古く、現在も市民に愛され続け利用されている。ミラノの路面電車は、単に交通の歴史の一部に留まらず、現代に生きる文化遺産ともえる存在なのだ。
なぜミラノでは地下鉄ではなく路面電車が発達したのか?それは歴史的背景と都市の特性にあるとされている。ミラノの都市が拡大していく中で、当時地下鉄建設は技術的にもコスト的にも難しく、路面電車が比較的安価で迅速に敷設できる交通手段だった。さらにミラノの市街地は平坦で路面電車を運行する地理的条件にも恵まれていたからという理由。
それに加え、ミラノは歴史的な街並みが多く、地下鉄整備よりも、路面電車による柔軟な対応が好まれたからと理由もあるといわれる。いずれの理由にせよ路線を拡大と廃線を繰り返し、現在もミラノのアイコン的存在となっていることは間違いのないことだし、都市の歴史的景観を損なうことなく、街と調和しながら市民の移動手段として役立っている。
現在、ミラノの路面電車には新旧さまざまな車両が運行されている。レトロな車両は人気が高いが、しかしエアコンはない。暑いミラノの夏の日中に乗るのはかなりキツイものがあるかもしれない。が、太陽が傾き、空の色が群青色へと変わりかけたマジックアワーの時間、路面電車揺られ歴史的建造物の間をガタゴト進むのはとても旅情を盛り上げてくれることは間違いない。
取材・文・写真 山下マヌー
ミラノのおすすめホテル
※「詳しくはこちら」「検索する(宿泊のみ)」から先は外部サイトへ移動します。
ウェブサイト利用規約・プライバシーポリシーについては、移動先サイトの方針に従うものとします。