「コンシェルジェ」とは　金の鍵のバッジをつけたトップクラスのホテルマン

ホテルにおけるコンシェルジェというお仕事。旅好きな人ならすでにご存知かと思います。

ホテル滞在中の困りごとをたちどころに解決してくれる、宿泊客の強い味方。その内容は観光案内から買い物手配、入手困難な公演チケット予約、レストラン予約ほか多岐にわたる。逆にいえば、宿泊客はいかにコンシェルジェと上手に付き合い、使いこなせるかによってホテル滞在の快適さや楽しみが断然違ってくるというわけだ。
とはいえ、全てのホテルにコンシェルジェがいるわけではない。それなりのクラス（所謂5つ星クラス）のホテルでないとお目にかかれない人々でもある。

「翼の王国」4月号で特集しているクアラルンプール（KL）は、5スターホテルに安く泊まれることで知られる。どのくらい安いかについてその詳細は本誌をご覧いただくとして、一例をここでご紹介。たとえばザ・リッツカールトンの場合、原稿を書いている時点で東京のリッツカールトンの宿泊料が1泊15万円前後なのに対して、KLのリッツカールトンは1泊2万円前後！なんと7分の1の金額で宿泊できてしまうというから驚きだ。

安い＝チープというわけではまったくない。

コンシェルジェのサービスを始め、ワールドクラスのザ・リッツカールトンのサービスが受けられる。つまりKLでは、安く（お値打ちに）世界のホテルのお手本ともいえるザ・リッツ・カールトンのサービスが享受できるというわけだ。因みにホテルに寄ってはバトラーと呼ばれる人々もいるが、こちらはコンシェルジェと違い、ゲスト一人ひとりにつく専属の執事のようなもの。

そもそもコンシェルジェとは、フランス語で「守衛」という意味の「concierge」が語源。元々は城や邸宅の門番を指す言葉だ。しかし時が経つにつれて、コンシェルジェは高級住宅の住人のサポートや案内といった重要な役割を担うようになり、その役割を世界で最初にホテルに持ち込んだのが、セザール・リッツが創業したオテル・リッツ・パリ。他とは一線を画す洗練されたサービスを提供する最高級のホテルとして、フランスを代表するホテル。オテル・リッツと同じ創業者により同じコンセプトでアメリカに作られたのが、ザ・リッツ・カールトン。正統派のコンシェルジェサービスを受け継ぐホテルといってもいい。

白い服の方はザ・マジェスティックホテルクアラルンプールのコンシェルジェ

コンシェルジェは誰でもなれるわけではなく、コンシェルジェ協会から資格を与えられなくてはならない。
いくつか協会がある中、最も権威と歴史があるのがLes Clefs d’Or（レ・クレドール）。1929年に設立された、世界初のコンシェルジュ協会。会員になるためには厳しい基準と試験をクリアする必要があり、現場経験や言語能力のみならず、地理や歴史文化、サービスに関する知識などが求められる、なかなかハードルの高い内容となっている。

現在その人数は世界で約4000人。4000という数字だけを聞くと多いように思うかもしれないが、インターコンチネンタルホテルズグループ、ヒルトン・ワールドワイド、マリオット・インターナショナルなどの目ぼしい世界チェーンホテルの件数だけで約5万件ということを考えれば、4000という数がどれだけ少ないか。まさにホテルマンのトップオブトップともいえる憧れのポジションでもある。

Les Clefs d’Orはフランス語で「金の鍵」。Les Clefs d’Orのメンバーは、特別な金の鍵のバッジを身に着けており、それは彼らの権威や専門知識を象徴しているものでもある。Les Clefs d’Orのメンバーは、お客様に対し最高水準のサービスを提供することを誇りに思い、“Service through Friendship”「友情を通じたサービス」をモットーとし、常に要望に応えることを心掛けている。

次回、ホテルで金の鍵の襟章つけているホテルマンを見かけたら、あなたに親友がしてれくれるようなサービスを提供してくれるに違いない。ただし、お願いするこちら側にもそれなりの心構え（つまりお願いするサービスの内容）が伴っていないとちょっと恥ずかしい思いをするかもしれない…。あ、でもそれさえも感じさせないのがコンシェルジェ…。

写真・文　尾嶝太文／山下マヌー