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韓国の市場はローカルのエネルギーに満ちていた~搾りたてのごま油を求め、ソウルへvol.1

韓国の市場はローカルのエネルギーに満ちていた~搾りたてのごま油を求め、ソウルへvol.1

TRAVEL 2022.11 韓国特集

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眠らぬ人、眠らぬ市場。 故郷の市場にただいま!

かつて観光で賑わっていたはずのソウルも、コロナの影によりすっかり観光客は激減。この2年は、地元韓国の人にとっても苦しい自粛の日々だった。それでも、ローカルたちの衣食住を支える〝市場〟が消えることはない。久々に訪れたソウルは、現地の人のエネルギーで人波が戻り、活気を回復していた。

コロナ禍の中、なかなか訪れることが難しくなった韓国と日本を繋ぐべく、搾りたてのごま油ブランド「SOL( SOL( SEOUL()」を生み 出したソウミンジョンさんは、韓国市場の魅力を知り尽くす。何度も韓国中のごま油屋さん達とやりとりをして誕生した「ソルソルソウル」のごま油は、たちまち日本でヒット。即完売の人気ブランドとなった。久々に降り立った彼女の目に映る、ソウル市場の今とは。新しい食と伝統的な 食文化を見つめながら、ごま油の香ばしい香りに誘われ、ここからはミンさんに市場歩きの旅をアテンドしてもらおう。

韓国の市場や飲食店は、なぜ、同じエリアに同じジャンルで軒を連ねて集結する

韓国の市場やお店は、同じメニューを出す似た店が、同じエリアにずらりと並んで集結しています。例えば、〝タッカンマリ通り〞〝焼き魚ストリート〞〝冷麺通り〞〝ユッケ通り〞というように。値段もシステムもお隣さんといっしょ。一つの店がサラダのサービスを始めると、その通りの全部の店が同じサービスを始めざるを得ない。競争率が高まりマイナス効果では……

南大門市場()を歩きながら、クッパを売っている人に「なぜこの通りは同じクッパメニューのお店ばかりなの?」と聞くと「例えばどこかクッパで繁盛した店ができると、隣で同じメニューで商売をしたら売れるだろう、となる。長い目で見るとお客さんに〝クッパといえばあの通り〞と覚えてもらえるし、助け合いにもなり、効率がいいから」という興味深い答えが返ってきました。ランチタイムになると、次々とクッパめがけてくるお客さんでストリートが埋まっていくではないですか、 なんだこのチームワークは! と深く納得(笑)。長年同じ場所で共存しながら協力し合うオモニたちの姿に、韓国人の文化と知恵がよく反映されているように感じられました。

中部市場 (チュンブシジャン)

営業時間 4:00 ~ 19:00 ※店舗により異なる。

約1,000店の商店がひしめきあう。卸しから一般家庭の主婦までが御用達。乾物・干物を中心に、海苔、魚、精肉、野菜、果物、キムチ、ごま油などの専門店も並ぶ。

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屋台の朝食。その背中には〝一日を迎える活気〞

朝食を求め南大門市場(をぶらり。ソウル最古の600年の歴史をもつ南大門市場には、衣類・生活用品などおよそ一万もの店舗がひしめき、ショッピングだけでなく屋台や横丁も魅力! 朝からやっている横丁には、近所の人々が朝食に訪れます。朝食なので味はやさしいものの、けっこうボリュームはアリ。今はライフスタイルの多様化によって様々ですが、従来から、韓国の朝食はご飯と汁物に、キムチ、焼き物、ナムルなどおかずを用意してしっかり栄養を摂るのが主流でした。農業社会において体力を保つ必要があったからです。また、産業革命が起きて労働環境が厳しくなると益々、朝ごはんが一日を元気に過ごすためのエネルギー源になったと言われます。南大門の風景を見ていて、私が幼い頃から見ていた朝ごはんの懐かしさを感じました。朝ごはんをいただくことは、生きること。黙々と食事をする人々の背中には〝一日を迎える活気〞が溢れていましたね。

スンデクッパも朝やランチにぴったりのやさしい味わい。スンデとは、朝鮮半島の豚の腸詰食品。コクのある白濁スープは寒い時季も温まる!

やさしい味のだしうどん(カルグクス) が有名な通り。どの店もカルグクスを頼むと冷麺、漬物もセットでつけてくれ、8,000ウォン(約800円)ほど。

定食?それとも食べ歩き?

大行列を作っているホットックや、目の前の鉄板で焼いてくれる卵焼き+バターたっぷりトーストなど、朝食片手に街を歩くのも南大門の楽しみ方。 一方、定食スタイルもローカルの朝・昼の定番。今回私が感動したのが、南大門名物のひとつ太刀魚()横丁。韓国版焼き魚定食が食べられます。よく出る魚は、太刀魚、さんま、()など日本でも馴染みのあるもので、太刀魚横丁の名物は、焼き魚か「カルチジョリム(太刀魚の辛煮)」。唐辛子粉をたっぷり入れてぐつぐつ煮る煮魚は本当に絶品!

カルチジョリムの定食と、焼き魚定食。どっちも頼んでシェアする人も多い。どの店もケランチム(韓国風茶碗蒸し)を付けてくれる。

若者も通う! 南大門市場の名物通り「太刀魚横丁」入り口。太刀魚の煮付けと焼魚定食の専門店が並ぶ路地。

「ソトクソトク」。ソーセーじの「ソ」と韓国語で餅を意味する「トック」が組み合わさって交互に串に刺されているからだそう。食べ歩きにぴったり!

大行列ができる、ホットック屋台。人気の野菜チャプチェ入り、シナモン香る黒蜜ナッツ、あんこと3種類が選べる。

南大門市場 (ナンデムンシジャン)

営業時間 早朝〜23:00

※店舗により異なる。

韓国食品、お菓子、お土産、衣料品、時計、キッチン用品などが揃う、ソウル最古の市場。屋台はビビンパ、トッポッキ、カルチジョリム、カルグクス、参鶏湯()などが有名。

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市場で呑む。急ぐ人は誰もいない。絶えず流動的でいて悠々とした時間が流れる。

夜ごはんは一日を終える人生の楽しみのようなもの。午後から盛り上がるのが、一杯飲める屋台。広蔵市場()の「うまいもん通り」は壮観!

オモニが営む屋台が並び、メニューはここも同じ店が多く、トッポッキ、チャプチェ、マンドゥ(餃子)、キンパ、韓国おでん、チヂミ、スンデ(豚の腸詰め)などが定番です。特にキンパは、普通のキンパより一口サイズで具もシンプルな「麻薬キンパ」が名物。その名の通り、やみつきに。ここではソジュ(韓国焼酎)を片手につまみを楽しむ人も多く、昼から賑やかな声が聞こえます。 朝の活気とまた違うのが、せかせかと急ぐ人はいなくその場その時間を楽しむ人が絶えず往来していること。人が集まるところにはエネルギーがありますね。韓国の市場は文化が深く染み込んでいて、そこには人間味があります。ローカルにとっては単なる買い物の場所ではなく、人との交流を求めて訪れる〝実家〞のような場所だと感じています。市場でしか感じることのない文化的要素が存在しているので、今後も月日が経つほど市場の価値に磨きがかかり、次世代の人や観光客にとって益々魅力的な場所になっていくのではないでしょうか。商人のオモニ、アボジたちがいつまでも健康であってほしいですね。

広蔵市場 (クァンジャンシジャン)

営業時間 一般商店9:00 ~ 18:00 グルメストリート10:00 ~ 23:00 ※店舗により異なる。

1905年に誕生100年以上の歴史を誇る市場。食材から衣類に至るまで幅広い商品を取り扱い、「うまいもん通り」では広蔵市場ならではの屋台グルメを体験できる。

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案内人/ソウミンジョン 撮影/尾原深水 編集/中野桜子

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