ハワイのソウルフードはポケじゃない? 日系人家族が守る“ポイ”とタロ畑の文化

ハワイのソウルフードと聞いて、観光客の多くは「ポケ」と即答する。しかし、ハワイの人々にとって本当の意味で“魂”に近い食べ物といえば、ポイ。
ポイとはタロイモから作られた 紫色のねっとりした、あれ。見た目は地味だけど、存在は深い。 そのタロイモの聖地ともいうべき場所が、カウアイ島のハナレイ地区。広大な湿地に広がるタロ畑だが、その畑のほとんどを管理し、栽培しているのが日系5世の原口ファミリー。

この広大な畑は、農地であると同時に野鳥保護区でもある。つまり、それだけハワイの原風景…自然の姿が残されている場所なのだ。そのため他人が勝手に入ることはできないし、持ち主が勝手に売ることもできない。 自然と共にある畑。いや、自然に委ねている畑。
近くを流れるハナレイ川は“暴れ川”としても知られ、けっこうな頻度で川の水が溢れて畑まで流れ込む。 台風が来れば海から川へと水が逆流し、畑は浸水。 タロの頭まで水がかぶることもある。それでも原口さんたちは堤防を作らない。 理由は「それが自然の摂理だから」。


タロを守ることは、ハワイの自然を守ることでもある。 野鳥も、湿地も、洪水も、全てを含めて「ハワイ」なのだ。 それを日系人が守っているという事実に、誇らしい気持ちになる。
年々ポイを食べる人は減っている。 だからこそ原口さんたちは、さまざまな商品を開発、普及に努めている。(個人的に好きなのは、タロモチケーキ。もち米とタロとココナッツを混ぜて作る、まさに日本とハワイが合体した味。 食感はふわもち、どこか懐かしい優しい味わいだ)


消費が減っても、洪水が来ても、自然が気まぐれでも彼らは作り続ける。それは「タロを守るということは島の自然を守るということに繋がるから」。その信念が彼らを支えているからだろう。
タロ畑の風景は、どこか懐かしさがある。 水面に映る空、鳥の声、ぬかるみに足を取られながら進む感覚。 それは、田んぼのある日本の原風景にも似ている。実際、ここではタロを栽培する以前、お米を作っていたという。
日系人が自然と向き合いながら、静かにハワイのソウルフードを5世代にわたって育てているという事実に、自分としても日本人として誇らしさを覚え、勝手ながらハワイとのつながりを感じる。ハワイに渡った日本人の先達たちが“受け入れる”という生き方を選んできたということ。その選択がハワイの味を、文化を、未来を支えているのだ。
取材・文 山下マヌー
写真 高砂淳二
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