蜂蜜を作るのに森は欠かせない、だから森を守る!~インドネシア 森と島を守る2
水没の危険から首都ジャカルタを守るため、移転を進めているインドネシア。しかし移転をしたところで首都機能は守られても、ジャカルタに暮らす1000万の人々が安心できるわけではない。自然の力で都市部に流れ込む雨水の量を調整してくれる森を守ることは、自分たちの安全に直結することであり、文字通り「他人事」では済ますことはできない。その危機感から、それぞれの立場で森と環境を守るために活動をしている人々がいる。
「二酸化炭素は目に見えないものなので、計算して証明を出す必要があります。また、政府のルールが整っていけば、環境破壊への理解が深まっていくと思っています。その結果として二酸化炭素を吸収する木々が伐採されることが少なくなって、森の環境にとっても良い状態になっていきます」。そう語るのは、カーボンリダクションコンサルタントのイブラヒム氏とルスファン氏。
「実はインドネシアは世界で2番目に二酸化炭素を吸収している国なんです」。つまりそれだけ森林面積が広いということ。実際国土の半分近くの面積を森が占めている。
二人が所属する会社は、企業が排出する二酸化炭素を森がどのくらい吸収しているのかを測り、企業が環境に与える影響や二酸化炭素の排出削減のためのアドバイス、生物多様性のためにできることを提案している。
「国の二酸化炭素の削減目標は、2030年の排出量を2010年の排出量より42%下げること。現状は減ってきていると思います。理由はいろいろありますが、特に影響を与えたのが油ヤシの農園への許可を厳しくしたこと。ヤシやオイルパームの農園は森林へダメージを与えていた大きな原因でした。政府は農園を監視するようになり、規制前に認可を取った農園は活動ができますが、新たに土地を取得しての開発はできなくなりました。そのおかげで伐採される森林の面積は減少したのです」。
「カーボンが森や生物に与える影響は小さくありません。確実に影響はあります。動物たちは森に十分な食料があれば森から出てきませんが、近年は村に出現するようになっています。地球温暖化が生物に与える影響はグローバル的に考えなければならない問題です。幸いハリムン国立公園の環境破壊はまだまだ小さい問題ですが、これが大きくならないよう、民間と国とが協力して注意深く見守っていく。同時に、生態系の機能と人間の経済を守るためのバランスを探ることが必要なのです。
「蜂蜜を作るのに森は欠かせません。だから収益は森を守るために使っています」と語るのは、養蜂家のティウイ さん。彼女は森だけでなく、恵まれない子供たち(孤児)を守る活動も行う。
「子供たちのために学校を作り、広大な自然の中で有機蜂蜜を作ったり、川で魚を育てたり自給自足の生活と教育指導をしています」。蜂蜜づくりを森で始めた理由は「蜂が森にとどまることで守れる森の生態系があるから」と考えてのことだという。今後は微生物研究者の協力を得て、オーガニックにこだわった高品質の蜂蜜を国内外へと販売。その売り上げで孤児院の生徒達を農業人材として育成するプロジェクトや、地域循環型農業を推進していくという大きな目標を掲げている。
森を守っていけば、森は大きな夢を与えてくれるのだ。
写真:高砂淳二 取材&文:山下マヌー 協力:インドネシア総合研究所