ハワイにも“カニ道楽”!? 海産物老舗ポケの名店の意外なシンボルに迫る
ハワイを代表するポケの老舗であり、名店でもあるタマシロ。1947年、ハワイ島ヒロの町を襲った津波で家を失い、オアフ島へ移住した現在のオーナーの祖先が始めた店。淡いピンク色した建物の2階近くに取り付けられた、ユルいカニのオブジェが目を引く。
日本のかに道楽を模したものかと思えるが、ポケの名店になぜカニなのか。過去に何度も取材で訪れてはいるものの、つい聞きそびれたまま、謎が残り続けていた。

今回こそその疑問を解決すべく、ポケに関する質問よりも先にカニのオブジェについて尋ねることに。すると、意外な事実が判明。日本のかに道楽を模したものではなく、それよりも先に取り付けられたもの。しかも日本で制作され、ハワイへ運ばれてきたという。しかし、なぜそこまでカニにこだわったのか?
ヒロから現在のカリヒに出店した当時は、タマシロは豚肉と生鮮食品を扱う小さな店だったそうだ。しかし同業店が多かったのとオアフには魚を扱う店が少なかったことから、1949年に魚介類の販売を開始。
「最初は生きた魚介類の扱い方がわからず、苦労の連続だった」(オーナーのタマシロさん。試行錯誤の末、生け簀を設けてサモアンクラブを売ることにたどり着く。当時はサモアンクラブを扱う市場もなく、ローカルたちが海で獲ってきたものを買い入れていたという。

「サモアンクラブはとても危険。爪が大きく、歩くのが早い」。そのため、爪を紐で縛った状態で生け簀に入れるのだが、しかし中には器用に紐をほどき生け簀から脱走するカニも。店を飛び出し道路を横切るカニの姿を見た近所の人から、「タマシロさん、またカニが逃げ出していますよ」と連絡が入ることもしょっちゅうだったらしく、「慌てて捕まえに行き、再び生け簀に戻す」という、そんなおおらかな時代でもあったという。


そうした出来事を繰り返すうちに、タマシロは新鮮なカニを扱う店として知られるように。それなら「店のシンボルに」と、親戚がわざわざ日本で作り送ってくれたのが、あのオブジェだったというわけ。
今ではローカルのみならず観光客からも親しまれるタマシロのアイコンは、スタッフのTシャツにもデザインされている。因みにレッドのシャツはベテラン、オレンジはトレーニング中とスタッフのレベルで色分けがされているという。

次回ハワイを訪れ、美味しいポケが食べたくなったら、ぜひタマシロへ行き、ピンクの建物に取り付けられたカニを見上げ、この話を思い出してみるのも悪くない?
取材・文 山下マヌー
写真 内田恒
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