ハワイの人はビール好き？ 値段が高くても人気　クラフトビールの進化

23と830。この数字はハワイと日本のあるものを比較したものだが、さて、何の数字かお分かりだろうか？

実はこれ、ハワイと日本のクラフトビールの数。これをハワイと日本の人口比で見ると、約120万と約66万になり、ハワイには日本の倍の数のクラフトビールが存在していることがわかる。

そもそも人口約150万足らずのハワイ州に23ものクラフトビール（取材時）が存在できていることが不思議だが、しかし人口約6万人のカウアイ島にも複数のクラフトビールが存続し続けていることも不思議だ。いったいハワイの人々はどれだけビールが好きなんだ？という疑問も湧いてくる。

その疑問に答えてくれたのがゲイツさん。ゲイツさんの本職はハワイ在住の連邦政府職員だが、BJCP（ビールジャッジサーティフィケーションプログラム）の審査員でもある。その彼がハワイのビールに興味を持ったのは、「2016年の誕生日に、一日でハワイのブリュワリー全部に連れていってくれたことから」

かなりサプライズの効いたプレゼントをされたわけだが、それがきっかけとなりハワイのビールにハマり、ビール関連のSNSではハワイで最も多くのフォロワーを集めている。

彼がハワイに来たときには2つ（コナビールとゴールデンビアーッシュ）しかなかったハワイのクラフトビールだが「2013年〜2014年にかけて劇的にハワイのビールを取り巻く環境が変わった。カリファルニアやオレゴンではハワイより先にムーブメントが起こっていて、その波がハワイにもやってきた」

ブームがブームで終わらず現在まで続いているのは、ビールそのものに魅力があるからなのだが、ハワイのクラフトビールの魅力とはなんのだろう？

「ビール一缶造るのに、大量の水が必要です。水が豊富でないと作れない。ハワイには水が豊富にある。しかも自然の美しい水。ミネラルも豊富で味も美味しいし島ごとに味も違う。水が違えばビールの味もそれぞれ違うし、それが個性にもなる。ビールごとにホップの量やフィルターの方法、使用する材料が違っても、ベースとなる水が美味しいからハワイのビールはどこもおいしいのです」

材料という言葉が出たところで、ハワイらしい材料、素材を使ったクラフトビールについて聞いてみた。
「ラニカイビールのようにトロピカルフルーツを使ったり、チョコレートやハイビスカスを使ったりするのはハワイらしくて面白い。海の水を使用したビールもあります（ビールを作る過程で有害な菌は死んでいくので心配ないという）。ハワイのトレンドとして、去年あたりからライトビールの人気が高まっています。最新の流行はラガーのライスビール。カリフォルニア米や寿司用の米を使ったビールで、寿司を食べるとき飲むビールとして売り出しています。

オアフ島以外の島に殆ど行かない日本人旅行者のために、他の島のビールについても聞いてみた。
「カウアイ島のカウアイアイビールカンパニー、カウアイアイランドブリューイングは好きだな。ムーチョアロハもいい。この3つはオススメ。マウイ島のハレアカラの麓という、素晴らしいロケーションにブリューワリーがあるマハロエールオークスもクリスピーな味でおいしい。ラハイナにはカホロブリュワリーがあったのだけど、火事で焼けてしまって…。ハワイ島のコナビールがカホロのビールのボトリングをヘルプして、再建を手助けしています」

ところで、正直なところハワイのクラフトビールは安くない。いやむしろ高いくらい。これはビール好きには大問題なのだが、どうしたものか？

「ホップやモルツを始め材料のほとんどを外から運んでくるので値段が高くなるのは仕方がないんです。これはビールだけに限らないハワイの宿命のようなものです。またマウイのキヘイにあるブリュワリー、ハワイ島のコナブリュワリーのようにドライ（雨の少ない）エリアにあるブリュワリーは、一度使った水をろ過して利用するなど、島の資源を無駄にしないようサステナブルなやり方を実践しているところもあります」

聞いているうち、ハワイの全てのブリュワリーを訪ねてみたくなった。アメリカでは『その土地のビールを飲に行く』ということが旅の大きな目的にもなり、毎日タップバーやブリュワリーでビールを飲むという旅をしている人もいる。

Drinking＆ Traveling in HAWAII
次のハワイ特集の企画に出してみるかな。
「どうせ飲みたいだけなんだろっ！」…そう一喝されそうな気もするけど。

取材・文　山下マヌー
写真　高砂順二

＜ハワイへの翼＞
日本からANA 直行便利用でホノルルのダニエル・K・イノウエ国際空港（HNL）まで約7時間。空港からワイキキ市内まではタクシーで約30分、バスでは約1時間。

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