旅行では気づかない 今ハワイに起きている「大変なこと」 あの火事が奪ったものとは
「翼の王国」(2024年9月号)ハワイ特集のテーマは水。「ハワイを形成しているのは紛れもなく水」ということをテーマに取材。現地では水に関わる人々に話を聞いている。
その中の一人、ブレナキーフさんは絶滅の危機にある在来種の保護と育成、昆虫や鳥などの保護と適応化の活動を行っている。在来種が絶滅に瀕している主な原因は、外来種の繁殖によるもの。外来種、つまり本来はこの島に存在していなかったもの。それが人の移動などによって島に持ち込まれ、島の環境の中で拡大と拡散を続けている。
一見すると緑が多く感じるハワイだが、しかし今、山の中に外来種が増え、「大変なこと」が起こりつつあるのだ。
ハワイの山の中で進行しつつある「大変なこと」。それは水の危機に繋がりかねないということ。
ハワイは島であるにも関わらず、人々が水に困ることなく暮らしてこられた理由は、海底火山の爆発により姿を表した山にある。海から蒸発した水蒸気が雲となり、雲が島の山にぶつかり留まることで雨を降らせる。降った雨水は地下に浸透し、地下は多量の水の貯蔵庫となる。長い年月の間に蓄えられた地下水が湧き水として地上に現れ、生き物たちを支えてきた。キーフさんによると「その流れのシステムの途中で人間が生きてきた。ところが外来種が増えることで、そのサイクルが壊れかけている」とのこと。
「現代まで続いてきたハワイの自然環境を継続し、在来種を守りながら、きれいな水の循環を継続させることが私の仕事」というキーフさん。空から降った雨が地下に浸透し、やがて海まで流れていく間に邪魔するものがないようにするチェックするのも仕事。そのためには在来種の保護・育成が欠かせないという。
「なぜなら外来種は、在来種と違って水を蓄えられません。雨が多いハワイでは水をたくさん蓄えられる樹木を増やさなければなりません。外来種が繁殖することで土砂崩れが起きるということはすでにわかっています。そうなると地下に水が浸透していかなくなり、ハワイの本来あるべき水の循環が崩れてしまう。そうならないために外来種を取り除く活動が大切なのです」
「全てがなくなってしまったラハイナの火事は不幸なことでした。一から再建しなくてはなりません。植物も同じです。『せっかくなので古来種を植えよう』という意見もあるのですが、肝心の種がありません。在来種の数が減ってしまったために種がないという現実。在来種を増やすことは急務なのです」
しかしながら現実はお金も人も不足。結局はハワイ大学が中心となり、在来種の保護と外来種の駆除を行っているのだ。「この現実をもっと多くの人に知ってもらいたい」というキーフさんの訴えに、観光客の我々も耳を傾けるべきなのだ。
「山には緑があるし木がある。『ハワイは緑がたくさんあっていいな』って思うかもしれません。だけどその緑のどれが外来種なのか在来種なのか見分けがつかなくなっているいというのが現状です」
「この小さな島で水を保つというのは大切なこと。『ホテルで水を大切に使おう、節水しよう』とは思いませんよね。だけど観光客の人も少し意識してくれたらと思います」
そう語るキーフさんは、日本人をはじめ、たくさんの人にハワイに来てほしいと願う。ハイキングツアーなどにも参加して山を見て感じてほしいとの思いだ。
「どこの大陸とも接していない小さな島、ハワイ。何かあったらどこも助けてくれない。だからみんなが大切にしないといけないのです」
そう語るキーフさんの言葉が胸に響く。
取材・文 山下マヌー
写真 高砂順二
<ハワイへの翼>
日本からANA 直行便利用でホノルルのダニエル・K・イノウエ国際空港(HNL)まで約7時間。空港からワイキキ市内まではタクシーで約30分、バスでは約1時間。
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