ベルリンで出会った日本酒と本格和食の感動ペアリング〜ドイツの優しさに触れる旅vol.5
「このお店は私の憩いの場です。日本人よりも日本の食文化の発展を考えている店主には感動させられます(案内人・伊東楓)
「オープン当初は、日本酒自体、初めて飲むというお客様もたくさんいましたが、『ワインよりも美味しい』とおっしゃる方も増えてきたんですよ」
ベルリン西部の閑静な住宅街で、日本酒バー「NOMU SAKE BAR」を経営するサラ・ステインさん。故郷・米国サンフランシスコでは日本料理店を訪ねることが多く、「日本酒と日本の食文化に恋をした」と笑顔を見せる。
日本有数の酒蔵から仕入れる酒は30〜40種。日本でもなかなか入手できない貴重な銘柄が多い。
「日本酒を提供するときは、ひとつひとつ、生産地や蔵元、製造方法などを丁寧に説明しながら、お食事に合う日本酒のペアリングをおすすめしています」
フードメニューは、おまかせのコース料理を提供。あん肝と真鯛のポン酢ジュレ、ブリの照り焼き、ひつまぶしなど、ドイツにいながらにして本格和食がいただける。店のコンセプトは、〝日本文化を学ぶ場所〟だ。
「ドイツで日本食といったら、寿司やラーメンがほとんど。ですが、日本食はもっと奥が深く、繊細なものだと思っています。あえてコースのみにしたのは、日本の食文化の知識がない人たちに、日本料理の美味しさと日本酒との調和の素晴らしさを知ってもらうためです」
4年前に夫とベルリンに移住したサラさん。世界的パンデミックのなか、日本酒バーのアイデアが浮かび、1年前に店をオープンさせた。
「ベルリンに日本酒ショップ『SUISUI』をオープンする予定もあります。ヨーロッパ市場を徐々に拡大し、落ち込んでいる日本酒の市場に活気を戻すこと、それが私の使命だと思っています」
日本人シェフが作る料理は見た目も鮮やか。写真手前は、新作の青森名物「いちご煮」。
NOMU SAKE BAR
前首相も通う名店の味
「シュニッツェル」とは、ドイツ語で薄切り肉の意味で、子牛の赤身肉を薄くのばして揚げたカツレツ。ベルリンの一流レストランやホテルなどで賑わうミッテ区で、およそ170年の歴史を持つ「ボルヒャルト」は、メルケル前首相などの政治家や実業家が通う名店。大皿から飛び出すほどのシュニッツェルは、ブルーベリーソースを付けていただく。
Borchardt(ボルヒャルト)
定番パンとファストフードも本番の味は格別!
いっぽう、ファストフード「カリーヴルスト」もベルリン名物の一つ。焼いたソーセージをーロ大にカットしてケチャップとカレーパウダーをかけたもの。ローカルはフライドポテトと一緒に食べる。駅構内の売店で買えるプレッツェル(ドイツ発祥の焼き菓子パン)のようにスタンドで手軽に購入できるのがいい。
Curry36
(写真右)ベルリン発祥のカリーヴルストの人気店「Curry36」。
写真:yOU コーディネート:ケン若月 取材・文・編集:服部広子