韓国釜山・海女のもてなし 刺身と焼酎と笑顔のお裾分け
歴史と現代文化が交差する港町・釜山は「韓国の台所」。海の気配に包まれるこの街では、食とアートが人々の日常と溶け合っている。
ソウルとはまた違う時間が流れるこの場所では、港町らしい活気ある市場文化や、廃工場から生まれたアート空間が華やぐ。
その背景には、釜山を栄えさせた戦後の人々の努力とエネルギーが、ずっしりと根を張っていた。

釜山市街のビーチの賑わいも楽しいが、陸続きの島・影島へ足を延ばすと絶景の「太宗台」がある。展望台から断崖絶壁を見下ろすと、遥か下にカラフルなパラソルとテントが。息を切らして降りると、海女のアジュンマたちが笑顔で迎えてくれた。新鮮な貝や魚がずらりと並ぶ。海の音と日差しに包まれゴザに寝転べば、まさにユートピア。

「崖で働くのは大変じゃないの?」と尋ねると「毎日降り、登る生活だけど、楽しいよ。みんな仲良くここで暮らせることがとても幸せ。戦後に始めて約70年。代々続けられたのも家族のような仲間がいるから。自然の中での仕事は大変なときもあるけれど、それを感じながら生きることも楽しいと思ってる」と笑う海女の顔には、曇り一つない。
迷いない幸福感が心に刺さり、笑顔のお裾分けをいただく。


海女の営む刺身店「チャガルマダン(자갈마당)」への行き方は、自然公園である「太宗台」の入口から循環バス「タヌビ」に乗り、灯台(등대)で下車。灯台下の海岸まで長い階段を下っていく。
この日並んでいたのはアワビ、サザエ、タコ、ホヤ、ナマコ、ヒラメ。獲れたての生きた海産物をその場で捌いてくれる。釜山の焼酎“デソン”がよく合う。明るい海女たちは小さい頃からここで育ったから、家族のような関係だという。

太宗台(テジョンデ)展望台
257 Jeonmang-ro, Yeongdo-gu, Busan
取材・文・編集 中野桜子
写真 金子斗夢
通訳・コーディネーター ウォン・ガビン
コーディネーター 前園亜耶
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釜山への翼
釜山へは、東京(羽田空港)などからANA便でソウル(金浦空港)へ。ソウルからKTX(韓国高速鉄道)または韓国国内線飛行機で釜山へ。福岡空港から直行便飛行機や船便も出ているので、その際は福岡空港までANA便をご利用ください。