ベルギーのソウルフード ムール貝が愛される本当の理由
ベルギーのソウルフード=国民食といえば、なんといっても「ムール貝のワイン蒸し」。ブリュッセルの路地に並ぶレストランのテラス席で、美味しそうにムール貝を食べる人々の姿を頻繁に目にする。
どうしてムール貝が愛されてきたのか?
その理由を考えたとき、「ベルギーがムール貝の漁場である北海に面しているため、昔から好まれて食されてきたのだろう」と、そのくらいにしか思っていなかった。もちろんそのことも重要な要素ではあるのだけど、それだけではなかった。
中世から庶民にとって重要な食材として親しまれてきたムール貝。保存技術が発達していなかった当時、塩漬けや燻製にして保存可能な重要な食材としての役割を果たしてきた。また保存が可能なうえに比較的安価な食材であり、庶民でも気軽に購入することができた。そのため日常的な食卓に並ぶ身近な食材として、定着していく。
ムール貝が国民食となったもう一つの理由は、その調理方法のバリエーションの豊富さ。白ワイン蒸し、ビール蒸し、クリーム煮など、様々な調理方法が可能なムール貝はベルギー名産であるワインやビールとの相性も抜群。これらの調理方法はムール貝の旨味を最大限に引き出し、ムール貝をベルギー料理に欠かせない存在へと引き上げた。と同時に家庭でも気軽に調理ができるため、家族や友人が集まる席にも欠かせない食材となったのだ。
このように、ムール貝がベルギーの国民食となった理由は、豊富な漁場、歴史的な背景、手軽さ、調理方法のバリエーションなど様々な要素が絡み合ったからに違いない。伝統的な調理方法を守りながらも、新しいアレンジを加えて進化し続けるムール貝料理は、まさにベルギーの食文化を象徴する存在。
ムール貝を食べることはベルギーの食文化を体感し、その歴史や人々の暮らしに触れる機会だともいえる。
ベルギーでは「ムール貝は家族や友人と集まって食べるのに最適な食材です。殻を剥きながら会話に花を咲かせ、楽しい時間を過ごす」ためのものでもあるという。
次回ベルギーへ行かれたなら、ムール貝のバケットを囲み、大切な人と楽しい会話を楽しんでみてはいかがだろう。
写真・文 山下マヌー
<ベルギーへの翼>
成田国際空港(NRT)からブリュッセル空港(BRU)までANA直行便(毎週水・土発)利用で約14時間半。空港から市内中心部まで電車で約20分。市内からアントワープまで同約40分。帰国はブリュッセル空港(BRU)から成田国際空港(NRT)までANA直行便を利用(毎週水・土発)。