70年代リーバイスを扱う名店「Cowboy NEW」店主が語る“ビンテージは永遠”
チャトチャック・マーケットの奥、雑多な喧騒の中に佇むデニムショップがある。店名は「Cowboy NEW」。日本人バイヤーの間では知られた存在だが、店主の人生の転機は意外なほどシンプルなことがキッカケだった。
「最初は友達から集めた古着をフリーマーケットで売っていただけなんだ」。 そう語るオーナーは、生まれも育ちもバンコク。赤ビル(バンスージャンクション)に店を構えた後に、固定客が増えたこもあり、現在のチャトチャックへと移ってきた。元々は勤め人だったという彼に聞いてみた。
―デニムに興味を持ったきっかけは?
「今のように価値がつくなんて考えてなかった。ただ、風合いとか、色落ちとか、触ったときの感じが好きだっただけ。いつの間にかみんなが思い思いのスタイルで自由に売り買いをはじめるようになった。だから自分もやってみた。それだけだよ。」

店内には値段が大きく変わるデニムがずらりと並ぶ。素人目には一体何故これほどまでに値段と価値が変わるのか、何がどう違うのか、さっぱり見分けがつかない。
「まず見るのは色の落ち方。色が残っているほど高い。これが10万バーツ、こっちは15万バーツ。濃いからね」。高額商品を手に取り説明してくれる彼は、実に楽しそうなのである。
彼が扱うのは主に70年代のリーバイス。ロゴが“ビッグE”のものだけに絞っているという。
「色落ち、サイズ、状態。全部で値段が変わる。大きいサイズは特に高い」らしい。
仕入れ先は友人や知人、かつて売った人からの“買い戻し”も多く、中にはマレーシア方面から買取を頼まれることもあるという。
―金額はどうやって?偽物を掴まされたり騙されたことは?
「プライス表なんてないよ。全部、経験と感覚。色、サイズ、形、状態、年代……全部見て決める。騙されたこと?ないね。見ればわかるから。」

―ヴィンテージの価値って何ですか?
そう尋ねると、彼は迷わず答えた。
「VINTAGE IS NEVER DIE!ビンテージは死なない。昔から今まで、どの時代にもあるもの。それがヴィンテージ。」
そして、少し照れた表情で、
「私はビンテージを愛してる。傷は遺産、伝統、味。前のオーナーそれぞれにストーリーがある。」
― もしデニムと話せたら?
そう聞くと、彼は少し考え、
「お前、ここに来るまでどんなことされたんだ?オレならこんなふうにはしないよって。そしてオレのところに帰ってきたのか?と言ってあげたいかな」
その言葉の中には、タイ人特有の“良いものは巡り巡って戻ってくる”という輪廻観のようなものがあると言ったら、大袈裟か。

店にはフランス、イタリア、中国、日本、そしてタイの若者まで、さまざまな国の人が訪れる。
「みんなデニムが好きなんだよ。国は関係ない。」
おすすめを聞くと、彼は迷わず2点を指した。
「1930年代のタイプ1ジャケット、40万バーツ。背中の仕上げが違うんだ。こっちは50年代のビッグE、30万バーツ。」
値段だけ聞くと驚くが、彼の説明を聞いていると一本一本が“生きてきた時間”をまとっているように見えてくるから不思議だ。
「昔は畳一枚のスペースでデニムを並べて売っていた。それが今は、こんなふうに世界中の人と話せるようになった。趣味や興味を通して人とつながるって、すごく楽しいよ。」
―それって、デニムがつなぐ、人と人の物語ということでしょうか
「そうかもしれない。今日はあなたとこうして話せて嬉しかった。ありがとう。」
一本のデニムが語る物語は、過去を伝え、未来へと手渡されていく。デニムを無条件で愛し続ける人々がいる限り、この先も物語が続いていく。
取材・文 山下マヌー
撮影 秋田大輔
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